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TOP > ACCの活動 > イベント > 2017 カンヌライオンズ報告会 ~フイルム部門をどこよりも早く、深く~ 開催レポート

満場一致のグランプリ

CHANNEL 4「WE'RE THE SUPERHUMANS」

これは見るたびに鳥肌が立ちますね。グランプリは例年議論した上で決まるんですが今年はそうではなく即決でした。
身体に障がいを持つ方に対して、僕らの中で無意識に壁があると思うんですけど、そういう壁がこれを見ると消えるということですね。
どうしてもやっぱりステレオタイプみたいなものがあると思うんですけど、それを打ち砕くのは言葉で言うのは簡単だけど、壁の消し方が映像でしかできない方法で達成されている。

このキャストの方々がすごく魅力的に見えますよね。
「SUPERHUMANS」という言葉が、スーパーポジティブなイメージに転換される。身体障がい者の方々を、スーパーヒューマン、スーパーポジティブな存在として分けて見ているのではなく、メッセージが普遍的で、前向きに生きようとする全ての人の心に火を付けるような力を持っている。
審査では、この映像には固有の力があって、輝きを放っていると。これはもう理屈ではないんですよね。見る人に考えさせる力がある。ダイバーシティの新しい描き方がそこにある。
何よりもカンヌがずっと掲げている「pushed humanity forward(人間性を前進させる)」というすごく大きなテーマがあるんですけど、 グランプリレベルの作品はそこに触れる必要があるんです。フイルムに必要なものが全て入っているパーフェクトな作品だという評価でした。

ブランドの意思の多様さが見られる、シルバー作品群

COCA COLA 「THE LINE UP SONG」
審査員の推薦枠があって、ショートリストには残っていなかったんですが審査員長のピートがこれを推して、結果的にシルバーになりました。
なぜサッカー選手の紹介なのに卓球なのかというところが、じわじわきますよね(笑)。僕は結構好きです。
NIKE 「TIME IS PRECIOUS :30」
超シンプルにテキストとロボットボイスで作られていて、『JUST DO IT.』の仮想敵は何か?というテーマで、それは画面の前で時間を潰すことだという考えに基づいて作られています。現代の生活者文脈のようなものに対する表現のぶつけ方の強さが感じられます。
シンプルだけど、こうやって畳み掛けるようにメッセージが連続していって、最後に行動したくなる。『JUST DO IT.』の感じがとても出ている。
いろいろやり尽くしているスポーツカテゴリーの中で、新しい“スポーツシズル”みたいなものを見出してるという意味で評価されました。
VOLKSWAGEN AG 「LAUGHING HORSES(TVC) 」
こういうクラシカルなCMを見ると安心するね、という評価です。
クラシカルというのは、その商品の機能から発想されたCMで、最後に商品ベネフィットにしっかり落ちていく、という形のものです。伝統芸能的な話法というのがしっかりとあるものですね。別の言い方をすると相対的に商品発想みたいなCMが存在感を薄めていて、全体的にはブランドの意思を発信するようなアプローチが増えているということです。
MARZ NZ 「HARD TO IMPRESS」
子供が独り立ちするタイミングで、子供から捨てられた犬にリプレイスしましょう、というドキッとする投げかけがされています。ペットフードという商品からの距離の取り方、ターゲットとの新しい関係性の作り方、アイデアが新しいということの他に映像の作りに関してもユーモアのトーン設定や、メッセージの落とし込み方がうまいということで評価されました。
SICKKIDS FOUNDATION 「SICKKIDS VS - UNDENIABLE」
病気の子供のドネーションCMです。病気の子供が持つ悲しいとか弱いとか、涙を誘う、というイメージを仮想敵にして、逆にタフで荒々しくて力強い世界を描いているという、トーンの対立のさせ方が鮮やかです。特にアートディレクションが素晴らしいという評価でした。
TSURUYA CO.,LTD. 「STICKING TOGETHER, NO MATTER WHAT」
日本の瓦屋根のCMです。セッティングがシンプルで顔だけでエモーションを表現できている。人生を守る屋根という商品メッセージへの落とし込みが明快。そして、こういう低予算のCMでもアイデアが良ければ評価されることを示したい、という視点でシルバーに選ばれました。
SAMSUNG「OSTRICH」
いわゆる動物モノのCMですね。ダチョウの表情やアクションがとてもリアルで思わず見てしまいます。ダチョウがVRセットを付けて飛んでいく、という流れ自体は予想できるんですが、でもそんなことは関係なく楽しめる、という評価で選ばれました。
JHONSONVILLE「JEFF AND HIS FOREST FRIENDS BY JEFF」
これはJOHNSONVILLEの社員が出ている何本もあるCMの1つなんですが、それらに共通しているのは、JOHNSONVILLEの社員が自ら企画して自分がキャストになってストーリーを語るというキャンペーンのフレームです。
このフレームを「JOHNSONVILLE WAY.」という言葉でシンプルに括っている点も含めて戦略がいいということと、こういう企画は表現定着で失敗しがちなのに、このキャンペーンは仕上げが楽しいものになっている。そういうところも含めて評価しました。
WILDLIFE CONSERVATION FILM FESTIVAL 「DREAM」
CGのアニメーションのクオリティの高さが評価されました。
また、レ・ミゼラブルの有名な曲に乗せて描かれているというのもポイントですね。
SONY INTERACTIVE ENTERTAINMENT 「GRAVITY CAT」
何回か見ているうちに演出的な細かいこだわりが見えてくるんですけど、違和感の作り方、その違和感を連続させていく工夫がすごいんです。
入り口はネット動画のような感じで基本的に1カットで進んでいくのですが、途中から重力の変化が起こり、最後は空にドーンと抜けていく。最後まで見させる、連続的な違和感の作り方が素晴らしいと思います。
この作品は、去年資生堂のCM「High School Girl?」でゴールドを受賞した柳沢翔さんという方が監督されています。
柳沢さんは、去年今年と連続してカンヌを受賞した実績が評価され、前述で紹介したNIKEの86歳のシスターのCM「UNLIMITED YOUTH」など、有名なCMを数多く手がける、アメリカの著名なプロダクション「PRETTY BIRD」にレップされたそうです。これから世界で活躍されていく監督だと思います。
P&G「BRADSHAW STAIN」
スーパーボウルの中継で、コメンテーターの服にシミが付いているのを見た人たちが、気になってTwitterやソーシャルメディアで書き込みをする。そのソーシャルメディアでの反応を予測して、逆算してハーフタイムにCMを流す、というアイデア。こういった、テレビの新しい使い方が評価された作品です。
JOHN LEWIS「BUSTER THE BOXER」
毎年話題を呼んでいるJOHN LEWISのクリスマスのCM。
今年のグランプリ作品「WE’RE THE SUPERHUMANS」と同じ監督(Dougal Wilson)ですね。ハートウォーミングだし、完成度ももちろん高いんだけどストーリーの構成がちょっと弱いので、ゴールドには届かないといった評価でした。
LEROY MERLIN『LIFE’S ADVENTURE』
日曜大工用品を扱うお店のCM。家の修理を、夫婦の旅に見立てて、大きなスケールで、美しく描ききっているのが良かったです。

知性と温かさが感じられる、ブロンズ作品

VOLKSWAGEN「NOTHING」
慎み深くてミニマリストという、フォルクスワーゲンのブランドパーソナリティをよく表しています。宮崎駿のドキュメンタリーを見ていると、フォルクスワーゲンに乗ってるんですね。「フォルクスワーゲンっぽいよね」という印象を与える。
その知的で慎み深いブランドパーソナリティが良く出ていますよね。
FARNHAM ALE & LAGER「BRIDE」
苦味のあるジョークと言うんでしょうか。シンプルなのと、ビールカテゴリーの表現として新しい感じがします。また、低予算だけどそのシンプルな味が効いているというところも評価されました。
IKEA「EVERY OTHER WEEK」
これは個人的にとても好きですね。離婚した家族の暮らしという扱いづらいテーマに踏み込んでいますが、読後感として、IKEAの温かい眼差しというのが感じ取れます。
IKEAの本拠地であるスウェーデンで流れたCMなんですが、スウェーデンという国のオーディエンスが成熟していることも感じ取れるんじゃないかと思います。
IKEAのデスクの溝のところにペンを置くシーンなど、商品のさりげない見せ方も洗練されていると思いました。
TV2「ALL THAT WE SHARE - TVC」
今回全体の審査を通して多く見受けられたのが、ソーシャルエクスペリメントと言われる、いわゆる社会実験モノです。
実際に人々に何かを体験してもらって、それを映像化することによってテーマを実証する、そういう枠組みを持つものです。
これはここ何年かで多く見受けられていて、そういったものの大半は驚かせようとする作為や、キャストへの意図的な演出が透けて見えてくるんです。
けれど、この映像はそういう作為とかキャストへの演出が見えないということ、そこに人間の多様性の縮図や、真実が写っているみたいに感じさせてくれるところが良かったです。