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『クレイジージャーニー』ディレクター
横井 雄一郎

バラエティ? 旅番組? それともドキュメンタリー? クレイジーな旅人たちに番組ディレクターが同行し、世界中の信じられないような光景の数々を見せてくれる規格外の番組『クレイジージャーニー』。
地上波の番組とは思えない過激さが話題を呼び、ファンの輪を広げている。特番ではゴールデンタイムにも進出、ギャラクシー賞*まで受賞した。これまでにDVDは累計9万3千部を販売している。究極のマニアックな企画がどのように生み出され、なぜここまでウケるのか。この“規格外”を生み出したディレクターに話を聞いた。

*リヤカーをひいて歩き続けて41年、『リヤカーマン』永瀬忠志氏の出演回がギャラクシー賞(2016年5月度月間賞)を受賞。


インタビュアー ACC広報委員 丸山 顕

リアルなドキュメンタリーで“日常”を切り撮る

―正月特番から深夜帯でレギュラー化された番組ですね。
特に第一回目のルーマニア、マンホール・タウンに住む人々の姿は衝撃でした。地下に潜む彼らを探し出すところから追っかけています。「仕込みなし」の撮影ですよね?

仕込みはありません、リアルな現実です。あそこは本当にスゴかったですね。社会的な闇と、まるでゲームの中のような世界が凝縮された場所でした。事前のロケハンもなく、同行するのは本当にディレクターひとりだけです。毎回現地では、コーディネーターか通訳を雇うくらいで。ルーマニアの回も、事前情報ではマンホールの入口がたくさんあるということで行ったんですけど、実際は塞がれているものばかりで見つからなかった。現地の人に尋ねながら入口を探し当てました。

この間初めてバングラデシュで取材目的の“船の墓場”に入れないということがありましたけど、そういうことだってありうる。まだ一度だけですけど。ダメだったらダメだったことも含めて放送するつもりです。

地上の危険地帯を渡り歩いてレポートする
危険地帯ジャーナリスト 丸山ゴンザレス氏。

―テレビでは“普通ならやらないこと”をやっている。そこが圧倒的で魅力的な部分ですが、局内でもめたりしないんですか?

日本の価値観では普通じゃなくても、現地では普通のことであり、日常の一コマ。だから、それを日本の価値観だけで良い悪いと決めてしまうのは失礼かなと思っています。別に面白ネタで驚かそうとしているわけではないので。例えば、マンホールの下に住む人たちがドラッグをやっているシーンがあって、これはこの場所を表す現実なので放送したいと思いました。ただ、寄りでも撮ったんですけど、さすがに刺激が強いと思ったのと、その画を使わなくても充分伝わると思ったので、放送では引き画だけにしました。社内でも事前に「こういうものを撮りに行きますよ」と通してあるので、特に問題になったことはありません。

牛の血を飲んでいたり、犬を食べていたり…そういうシーンも、過激さよりも“日常”として紹介しているんですよね。だから最近では文化面をグッと取り上げるようにしています。そこが思った以上に見ていただいてる方の興味を惹いたんだな、と感じています。

―横井さんご自身が一番好きな回は、どれですか?

……「クレイジージャーニー」らしい、ということで言うと、ブラジルのスラム街「ファヴェーラ」に住む写真家・伊藤大輔さんの回でしょうか。ファヴェーラには、彼が撮影したような“銃を持ったギャング”が、普通にいるのも現実ですが、そこに住む人々の暮らしに笑顔や温かみがあるということもまた現実なので、その両方をちゃんと入れたいと思いました。ファヴェーラはギャングの巣窟かというとそうではない。スタジオの松本人志さんが「街はギャングだらけなんですか?」と聞いた時、「99人はいい人で、1人がギャングになるんです」と答えた伊藤さんの会話をちゃんと使いました。危険もあるけど、温かい日常があるということを伝えたいという気持ちが、伊藤さんにも僕らにもありました。最近たまに似た感じの番組を見かけて、過激さやグロさだけを追ってしまっているのを見ると、これで規制が厳しくなったら嫌だなと感じます。

自分が好きなことを突き詰めた企画

―そもそも、どうしてこの企画を思いついたんですか?

自分が旅好きということがあります。企画書がなかなか通らずに悩んでいた時期に、上司から「お前の好きなことを突き詰めて、それを形にした企画書を作ってみろ」と言われて。それと松本さんが好きで、以前から松本さんの企画をたくさん考えていたんです。僕が興奮するようなインドの路地裏を、飛行機嫌いで多分行かないであろう松本さんに見せたらなんて言うのかな?というのが合体したんです。ある種ぶっとんでいる松本さんが、一素人の旅にびっくりしている姿は、ある意味一番そのすごさが伝わるんじゃないかと。最初は正月特番で。社内でわりと良い評価で、すぐに深夜枠レギュラーになった。

―松本さん、バナナマン設楽さん、小池栄子さん、MCの取り合わせが絶妙ですね。驚きや呆れた表情など、スタジオの空気が伝わってくるようです。

今まで見たことのない組み合わせでやりたいという松本さんの意向もありました。吉本興業ではない実力派の設楽統さん、最近は女優業がメインの小池さんと、結果、良い意味で違和感ある組み合わせになった。収録では、話の取りこぼしがないように、ジャーニー(旅人)には手カンペを徹夜して用意しています。ところがほとんどのジャーニーが手カンペを見てくれないんです(笑)。みなさん、普段生き死にに関わるところにいる方ばかりなので、収録でも全然緊張しないで自由に喋るんですよね。それとMCのお三方は、一つのことに人生を捧げているジャーニーにリスペクトを持ってくれるんです。おかげでスタジオはとてもいい雰囲気で、ジャーニーの方々にも気持ちよく帰っていただける。