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座談会 チャレンジで広がるラジオCMの世界

ACC賞ラジオCM部門審査委員長の澤本嘉光氏(電通)が、生野徹氏(東京ガス)にもちかけて、お笑い芸人・遠山大輔氏と五明拓弥氏(グランジ)にラジオCMを作ってもらったら、本職のプランナーを抑えてたくさん採用され、さらにはフジサンケイグループ広告大賞の最優秀賞まで……!という顛末について4氏をお招きしてお話ししていただきました。いったいどういうことなのでしょう。

中嶌 直子

ACC会報「ACCtion!」編集長
アサツー ディ・ケイ
クリエイティブ
ディレクター

生野 徹

東京ガス
メディア室長

澤本 嘉光

電通
エグゼクティブ
クリエーティブ
ディレクター/
CMプランナー

遠山 大輔

グランジ

五明 拓弥

グランジ

これは大変なことになった by グランジ

中嶌そもそも、この企画はどういうきっかけで始まったんですか。

澤本まず僕が4年前にACCラジオCM部門の審査委員長を引き受けた時、それまでCMを作る人だけで審査をしていたので、メディア側の西田善太さん(『BRUTUS』編集長)とか、町の代表として山田美保子さん(放送作家)に来てもらって、様々な分野から審査委員を招くことにしたんです。その中で、しゃべる側代表の審査委員として遠山さんにもお願いして。今、会社に入ってくる若い世代のほとんどがラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」を聴いてるんですよ。その番組の中で校長としてやっていらっしゃるのが遠山さん。おそらく最もやらしい権威を持っていると思われる…。

遠山確かにたまに振りかざすときありますけど!

澤本自分がラジオ出てる時って、ラジオCMも聴いてるじゃないですか。そういう側からも審査してほしいなと思って。さまざまな審査員をいっぱい集めた結果、審査会がすごくおもしろくなったんですね。そんな中、遠山さんに「ラジオCM作りたい?」と聞いたら、作りたいし、さらに「作れる」と。

遠山いやいや、もうちょっと謙虚な気持ちはありましたよ。「もしかしたら」できるんじゃないかなって。

澤本ラジオCMって硬直化してると思ったんです。つまり、僕が会社に入った頃は、すごく自由な場だった。クライアントさんのチェックもそんなに厳しくなかったし、試してみたいことを試してみる場だった。でもいつの間にかそうでなくなっていて。それはもったいないと。むしろ僕らがルーチンワークとして型にはめがちなことを、芸人さんなどラジオとは一見関係がないと思える人に、ジャンルを超えて新鮮にやってもらうといま聞いているラジオCMと全然違うものになるかもしれない。そしてそういう人が入ってきてること自体が、「ラジオCMって場がおもしろいな」って思われたらいいと。で、その機会を探っていた時に、いつもラジオに前向きでいてくださる東京ガスさんが作っていいと言ってくれたんで。

中嶌なるほど。東京ガスさんはこのお話を受けてみてどうでしたか。

生野ACCの理事会の帰りに、澤本さんに「吉本のお笑いの方と作りたいんです」と立ち話で言われて、「いいんじゃないですか、おもしろそうで」と。澤本さんには「ガス・パッ・チョ!」の広告制作などをずっとやってもらっていて、絶大な信頼がベースにあるんです。澤本さんはラジオCMはおもしろくなくなっているとおっしゃっていたけど、澤本さんが優秀な若い人をたくさん連れてきてくれて、僕らにすると毎年おもしろいのができている。その若いクリエイターの方々も、育ってテレビCM作ったりしてるから、これはお互いwin-winですよね。僕らはクリエイターがどんな人でも、結果がよければいいので。

澤本競合なので、おふたりのほかにうちのプランナー5、6人をプレゼンに連れて行きました。東京ガスのラジオCMというのは、僕らにとっては特別な場所。ラジオCM好きだから、おもしろいラジオCMを作ってくれという依頼が元々あるんですよ。僕はそのラジオを使って、もうちょっとで芽が出るという若い人の、才能を開花させる場所にしたいと。それで1年目とか2年目の子を見ていて、この子とこの子はラジオ書いたらおもしろそうだなと思うと連れて行くので、人数が多くなる。それぞれプレゼンして、ひいき目なしでいい原稿が選ばれるんです。実際にそれで賞を獲ってる人がたくさんいて。その流れの中に、グランジのおふたりに入っていただいた。だから彼らは、フェアに選ばれてるんです。もともと、この人たちのを落とさないでくれとは言ってないので。

生野プレゼンの場にいない社員も、無記名の原稿を見て選びますから。誰のかわからない状態でグランジさんの作品は選ばれたんです。その前の、オリエンの内容もいつもと同じで、特別なことは何もない通常の流れでした。

中嶌グランジさんは、この企画が進むにあたってどう感じていましたか?

遠山まず、オリエンがなんのこっちゃだかわかってないんですよ。

五明オリエンって…一番最初のやつですか?

中嶌東京ガスさんから、こういうの作ってくださいと説明する会です。

遠山結構説明受けたんですけど、3分の2は理解できてなくて。でも一応「はい、はい」と返事してた感じです。澤本さんがそんな僕らを見越してなのか、「簡単に言うと、テーマがお風呂だったら“コントお風呂”みたいな感じで考えてくださったらいいですよ」とおっしゃって。それで、そういうことかと腑に落ちて。2週間後ぐらいにプレゼンがあるんで、どのテーマでもいいし、何本でもいいから考えてみてくれと。

中嶌ほかにプランナーも一緒だったんですよね。

遠山東京ガスさんの会議室で、僕と五明と電通の若手の方々と一緒に、生野さん含め東京ガスの方々の前で読み上げて。

中嶌全部で何案くらい出てきたんですか。

生野50くらい?今回は企業広告で、いつもなら15~20本を選ぶんですけど、今回は結果的に26本作りました。そのうち10本がグランジさん。でも当初からおふたりと関係ない作品もあるので、プレゼンされた中での採用率はもっと高くて、半分くらいがおふたりの作品でしたね。

中嶌すごいですね。プレゼンはどうでした?

澤本僕の後輩の反応が象徴的で、みんな「やばい」と思ったらしい。原稿もうまいんだけど、それよりプレゼンがうまいことにショックを受けていた。あの人たちが読むと原稿がものすごくうまく見えると。実際、プレゼンでクライアントの方が笑ってるんですよ。「僕たちが一生懸命やってもお笑いの人に負けてしまうんでしょうか」みたいな。多分おふたりはプレゼン初めてで、すごい汗かいてましたよ。

遠山僕らの汗だけで湿度すごい上がりましたもん。尋常じゃない緊張で。

五明終わった後の片頭痛とか。

中嶌(笑)プレゼンは、舞台に立つときのイメージで?

五明自分がおもしろいと思うものを自分の口で言わなきゃいけないって、すごい恥ずかしい。それからの、片頭痛です。

中嶌でもお笑いのネタってそういうものじゃないの?

五明相方に見せるのも、いまだに多少恥ずかしかったりするんです。それが知らない大人の方々の前で、スーツ着ている人がいて、固いムードで。遠山は澤本さんともお知り合いだけど、僕はオリエンで初めて会ったんですよ。それまでは何もわからない。この校長が「お前、やるか?」みたいな。「ひまだろ?」て。

遠山いや、五明もネタを書くので、できそうだからやらないかって。

五明僕も怖いんで、今日ってなんなの?詳細教えてくれよっつっても、「おお、おお」みたいな。

遠山俺もわかんないからね。

五明ならわかんないって言ってほしいんですよ! 知ってる感じで「おお」っていう。それで行ったら、そんな固いやつじゃないですか。それは頭も痛くなりますよ。

遠山だからプレゼンも最初の方、テンパってて全然覚えてないんです。しかもうちのキャプテン(澤本)がアイフォンでそのプレゼンを録音してて…怖いよ!それを、澤本さんと権八さんのラジオ番組(澤本・権八のすぐに終わりますから。)にゲストで呼んでいただいた時に聞いたんですよ。そしたら間もへったくれもないし、言葉の速度も早いし、10年以上芸人やってるのにこんなにへったくそなのかと。聞いていて恥ずかしいし、もうちょっとうまくできたはずだと思いました。

中嶌ほかの人のプレゼンはどうでした?

五明僕の前に3人やってるのを見て、これは大変なことになったと思いました。これから俺らが読むの、ちょっと違うかもしれないと。ほかの方のはやっぱり、CMなんですよね。僕のはコントなんですよ。

中嶌聞いた時、広告主としてはどうでしたか。

生野やっぱり雰囲気が全然ちがって、圧倒的におもしろいんですよ。あせってるなんて感じはわからなくて、間もうまくて、笑ってしまった。会議室が笑いでワーッとなって。拍手もあった。本来ないですよ、その場で拍手はさすがに。

遠山あの拍手は「はい、よくやったね~」というやつじゃないですか?

五明俺らの緊張を見かねて。拍手をせざるを得ない顔してたんですよ僕ら。

生野いや、おもしろかったんですよ。クリエイターの方もうまいけど、登場人物の声変えてまではやらないから。おもしろさに判断が流されないようにと、心の中では思っていました。