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~クリエイターわらしべ物語~

演出が一番楽しい

―アイデアはどう生み出しているんですか。

ネタ帳はあります。長谷川工業の脚立のCM(2015年ACCゴールド受賞)もネタ帳から。昔から“サプライズされるのがわかっているのにわざと驚いてみせる女子”にイラッとしてまして(笑)、それが元ネタです。芸人の変ホ長調の小田さんにお願いしたら、すぐに「あぁ~あれやろ、分かるわ~」と意図を組んでくれて、「ほな、ここ、こうする?」とか打ち合わせ30分して、収録は1テイクでした。この演者との打ち合わせが楽しいんですよ。これやってるとき、幸せだな~と思います。今コピーのお仕事をいただいてる方々からはありがたいことに「森田さんらしいやつを作って」とおっしゃってもらってるので、ネタに詰まることはあんまりありません。と言いつつも、いざ企画してるときは、毎回吐きそうだし泣きそうですけどね(笑)。でも企画ってそんなもんだと思ってます。

―演出の仕事も多いですよね。人の書いた原稿でも楽しいですか?

めっっっちゃ楽しいです。自分を分析すると、さみしがりなんですよね。だから誰かと一緒に仕事している、というのが楽しい。たぶん当て書きも、そういうことなんですよ。誰かを思いながら仕事したいっていう(笑)。それに気づいた時は恥ずかしかったですけど。芸人のグランジさんとやった時も本当に楽しかった。波長があって、やりとりが弾みまして。キャスティングは悩みますけど、演出が一番楽しいですよ。仕事をしていて一番好きなのは、演者さんがやりきって、いい笑顔で帰っていくのを見ること。見送る時、一緒にエレベーターに乗って行きたいくらい楽しい気持ちになります。

ラジオの魅力・ラジオのチャンス

―なぜラジオCMなんでしょう。ほかのメディアをやりたいとは思いませんか?

ラジオをやりたかったというより、ビッグフェイスに入りたかったからですね。元社長が好きだったからです。入社してからはケンカばっかりしてましたけど(笑)。そもそも、グラフィックのコピーではなく、ラジオが向いていたんだとは思います。フィルムもやりたいですよ。今ウェブムービーを書いて、という話をいただいていて、それは本当に嬉しいです。会話劇とか、ラジオでやったことを活かせると思うんですよね。どんどんトライしたいです。

―ラジオCM の中で、自分の持つ特徴は何だと思いますか。

特徴かどうかは分からないですけど、まず商品について、第一印象や思ったことを書き出すところから始めます。「おしゃれな脚立」とか「こてこてのビール」とか。ちっちゃいことでもいいんで、一消費者として思うことや気づいたことを書き出して企画にすることが多いような気はします。なので、企画の入り口がちっちゃいとか、それ企画になるんや?みたいなことをよく言われます。
でもそこをわかってくれるクライアントさんや、「いいやん、これ!」と自分を守ってくれるプロデューサーさんたちと出会えたことが非常に大きいです。運良いんですよ、ほんとにそこは感謝しています。あと僕、和歌山出身なんですよ。和歌山は大阪とは違うんです、大阪みたいに面白くないんです(笑)。関西弁のCMを作ってもそんなコテコテにならないのは、そこかなぁと思ってます。
ちなみに、2012年からはビッグフェイスが東京に移転しました。賞をいただく作品が関西弁だからか大阪在住と思われるんですけど、僕は東京に住んでますということを声を大にしていいたい。もう5年近く住んでるのに、いまだに「大阪からわざわざ打ち合わせに来ていただいて」みたいなこと言われるので。
思いっきり関西弁ですけど、最初の挨拶くらいはシュッと標準語で、というのが今の目標です。

隙間、大好き。

―関西弁でいいと思いますけど(笑)。今後の目標、ほかには。

これからもコピーを書きながら演出の精度を上げていきたいですし、若い人と仕事をして、その人のためになりたいという思いがあります。20代の頃って、一部の優秀な人以外は先が見えないじゃないですか。そんな人たちに何かを見せたい。苦しかったんで、自分自身も20代。この取材って「トップランナーに聞く」みたいな話ですけど、すみませんが僕なんてトップランナーでもなんでもない。ほんまに。隙間を突いてるだけです。なので、これからも作品を通じて「こういうやり方あるかも」みたいな隙間を見つけて、それを少し広げて立ち去る人でいたいです。「ここに隙間あるでー!」と大声で叫んで立ち去る。そういう隙間おじさん。もしくは“隙間の国の王子様”でいたいと思ってます(笑)。

―そんな後進にアドバイスを。

ラジオCMってめちゃめちゃチャンスだと思うんですよ。賞を獲るとひとりでボーンと名前が出る。ウケるにしろスベるにしろ、自分が責任を負えるということはプラスな体験です。自分に何が足りないかも含め、結果がわかりやすい。自分で書いて、自分で演出してダメだった時なんて、トイレ行くふりして帰りたくなりますよ。そういう経験を、得られる場だと思うんです。
そして常に、来るべきチャンスに備えるしかない。僕も年に2回くらいしかコピーを書くチャンスのない時期があって、そこで選ばれなければまた来年という。でも、公募に出すとか、地道に経験値を蓄積しないことには。公募で書き溜めたやつが将来違うクライアントに使えるかもしれないし、僕もつい4年前まで一生懸命公募に出していました。一歩ずつ、一歩ずつでしかないですね。なんか、えらそうですみません。

text:矢島 史  photo:佐藤 翔

森田一成(もりたかずなり)プロフィール

株式会社ビッグフェイス 代表取締役・コピーライター・ディレクター
1980年2月15日生まれ。
主な受賞歴に、ACCゴールド(2016・2015・2012)、ACCクラフトディレクター賞(2012)、ACCシルバー(2016・2013)、ACCブロンズ(2016・2016・2012・2010・2009)、TCC新人賞(2014)、Made in Osaka CM award最優秀賞(2015)、民放連賞 最優秀賞(2016・2014・2012)など。