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第十七回 箭内道彦 ✕ 岡康道



 岡: このシリーズは遠くから見てたんですけど、あれだよね?
ここに出るってことは、業界の重鎮というか、そろそろ辞めてくれ的な?(笑)

箭内: いや、齢を取っても、ちゃんと走ってる人ってことなんですよ。むしろ現役認定です。

 岡: 「あ、オレの番になっちゃったんだ」っていう。なんて言うんだろう? まあ、しょうがないよね(笑)。

箭内: 僕もこのシリーズに岡さんは出ないだろうと思ってましたね。ひとつ下の世代ですから。
でも岡さん1956年生まれということは、もしや還暦ですか?

 岡: たぶんね。でも、そのことに触れたくないですね。

箭内: え? ヤダってことですか? 自分が60代というか還暦迎えたというのは、正直。

 岡: ヤダよ。考えたくないよ。

箭内: でも、何の衰えもないでしょ? 肺の数値はいいし、髪の毛だってこんなにいっぱいあるし、若々しいし。

 岡: まあ、ビミョーにラインの向こう側に腑分けされたというかさ。「オレ、こっち?」っていう感じはちょっとある。

箭内: だからと言って別にTUGBOATの3人(川口清勝氏・多田琢氏・麻生哲朗氏)の態度が変わったわけじゃないでしょ? みんな一緒に上がっていってるわけですから。SMAPみたいに。

 岡: TUGBOATはオレに遠慮してるのか、そのことを話題にはしないんですけど、嫌がってるんだろうな? って。

箭内: うーん、ま、50代が似合いますよね? 岡さん、「永遠の54歳」っていうか。でも、いま還暦ってことはTUGBOAT作ったとき、40代だったってことですよね。

 岡: 42歳です。

箭内: へえー、そんなに若かったんだ。若造じゃないですか、いま思うと。

 岡: 18年も経っちゃった。

箭内: この18年間、失速もせず、つぶれもせず、むしろ加速しながら。

 岡: いや、加速はしてないと思うけど、ずっとあんまり変わらないですね。

箭内: でも、ペプシみたいなのがボーンと出たりとか。ああいうホームランって、だんだん打てなくなるじゃないですか?

 岡: ペプシは良かったですよね。
TUGBOATにとって良かったというよりも「コマーシャルってまだこんなことがやれるんだ」っていう感じがちょっとあったよね。

箭内: ああいうときって岡さん、社長としてどういう風に経緯を見守ってるんですか。多田さんがわーっと暴れるようなとき。

 岡: 話すと長くなるからはしょって言うんだけど、「コカ・コーラとは何か?」と考えたときに、どこにもない夢の国アメリカの象徴ですよね? で、ペプシはそれを倒さなくちゃいけない。となると、やるべきことはある種の「反米キャンペーン」のようなものなんじゃないか? と。そしたら武器は日本がもともと持ってる何かってことになるよねーといった話をみんなでしていって。

箭内: なるほど。そこの部分は岡さんがディレクションするんですね?

 岡: そうですね。そうじゃないときもあるけど。

箭内: 岡さんも入ってるんですか、あの仕事。

 岡: ずっと入ってるよ。ロケには行かないけど、オリエン、プレゼンはもちろん、編集、MAも行きますよね。

箭内: さっきの話で思い出したのが、岡さんが昔、「クリエイティブ・ディレクションとは何か?」という話を雑誌か何かでされてたんですけど、そこで「スタッフやメンバーが耳を疑うような指示を出す」って言ってたのが、僕は強烈に印象に残っていて。

 岡: そうなんですけど、難しいんですよね、それ。心がけてはいるんだけど、なかなかスタッフが耳疑うようなことは言えなくて。理想ではありますけど。

箭内: 僕、よく思うのはクリエイティブ・ディレクションって、ある種のショーアップが必要なんじゃないか? と。で、みんなが驚くようなことを会議で言うっていうのはまさにそれで。

 岡: 最初そう思ったのは30代後半の頃にね、初めてCDをやったとき、プランナーがまだ無名の多田だったんですよ。で、僕もCDって何やるのかわからなかったから、まずは意表をついたようなこと言ってみようと思って(笑)。で、多田に言ったのが「企画に日本語を使ってはいけない」と。「辞書を引いてもいけない。君の英語力で企画をしてほしい」って言ったら、あのペンギンの踊るやつが出てきたんですね。

箭内: ビクターの。

 岡: そう、ようはペンギンがしゃべるくらいの英語力しかないんですよ、多田には。で、ペンギンが言うことに答えるシロクマがいるんだけど、そいつも簡単な英語しかしゃべれない。でも、その中でどうやったら面白くなるだろうと多田が考えたわけですね。あれはかなり意表をついたし、耳を疑うようなものだったし、結果も良かったんで、「あ、こうやりゃいいんだ」と思ったんだけど、それ以降なかなか意表を突くようなことが言えなくてさ。

箭内: いや、突いてますよ、意表は。でも、それを通すときってどうされてるんですか。岡さんがこの顔とこの声とこの実績で話すから通るんだと思うんだけど、何かコツってあるんでしょうか。

 岡: 通らないよ、オレ、あんまり。このあいだ競合の勝率数えたら2割くらいだった。つまり10回で2回くらいしか通ってない。あんまり通らないんだなって改めて思いましたけど。