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◆「何を言うか」をシンプルにする。
 入賞したチームの企画はどれも「アテネにオリンピックが戻ってきた」としか言っていない。私たちは、メッセージを商品の細かい特性に落とし過ぎ、「どう言うか」のアイディアで戦う以前に、「何を言うか」の絞りこみで負けていた。もちろん入賞したチームも、クドクドと細かいオリエンを同じように聞いている。なのにそれをほとんど切り捨てて、わかりやすくて単純な「何を言うか」を選んだのだ。

◆オリエンをきちんと捨てる。
 「これって、他の会社(商品)でも言えますよね」。日本の仕事で、クライアントが得意とする決めゼリフである。他にない商品特性や差別化できるスペックを伝えて欲しいという要求。でも「差別化」なんて、しょせん送り手のエゴ。何の前知識もなく初めて広告に接する人には、そんなこと知ったこっちゃない。
 クライアントのオリエンを、広告を見る人の立場になってきちんと切り捨てているか?差別化という名のワガママを、当たり前に受け入れていないか?
 そういう部分が、私たちは甘かった。

◆広告を見る人のことを考えてつくる。(もっともっと)
 もちろん、今までだってやってきた。見る人がどう思うか、どう感じるか。いつも心がけてきたつもりだった。でも「まだ全然足りない」と、カンヌに言われた気がした。クライアントの言い分とかマーケティング分析とかタレントの都合とか、そんなものは見る人には関係ない。こちらの事情をどれだけ捨てて、広告に初めて触れる人の気持ちで広告を考えられるか。カンヌでは、ヤングコンペに限らず一般のコンペでも、それが徹底的に実践されている。だからとにかくシンプルだし、とにかくエンターテイメントに徹していた。
 広告を見る人のことを考えてつくる。馬鹿みたいに当たり前のことだけど、忘れがちで、目をそむけがちなこと。そういうことを私たちは、カンヌという場所で教わった気がした。もちろん、負けたままでは終われない。

ビルド・クリエイティブハウス
コピーライター 山田 慶太(写真 右)

電通 第4クリエーティブディレクション局
アートディレクター 佐藤 拓(写真 左)

電通 インタラクティブ・コミュニケーション局
ディレクター 中村 洋基


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