?お仕事しちゃった?ことが一番の反省点
司会● 私が最初にカンヌに行ったのは91年で、次に97年に審査員として行き、それから3年続けて行っています。95年から始まったヤングクリエイティブコンペはすごく気になっていました。若い人たちを他の業界に取られずに、どうやってこの業界に引っ張るかという問題が大きくて、その試みとしてヤングツアーというディスカウントツアーと、このコンペが始まったわけです。日本からは1年目に電通チーム、2年目に博報堂チーム、3年目にマッキャンチームが参加して、残念ながら賞には結びつきませんでしたが、日頃の仕事とは違った収穫があったかと思います。本日は参加された皆さんに、ヤングコンペに参加する前と今の違い、これからどうしようとしているかについてお話をお聞きします。どのような課題が出て、どのように仕上げたのでしょうか。
山上● 僕らが一番最初に行ったわけですが、それを言い始めたのはヤングコンペがスタートした95年からで、いろいろな人に行きたいと言っていたのです。だからこそ、過去どんなものが1位になっているか、下調べもして行きました。しかし、行ってみると全然状況が違っていました。英語が速くて、オリエンが全然わからないのです。
ヤングコンペのテーマは、大体、公共広告です。公共広告のオリエンは、テクニカルタームがすごい。僕らの年の課題は「チャイルド・レーバー(子供の労働)」で、すごい量のケーススタディを渡されて、もう全然わからないというのが、一番のショックでした。 辞書を片手に読んでいると、もう明け方ぐらいです。それから企画をするのですが、もう精神的にダメ(笑)。太陽が登る頃にやっと全貌が見えてきて、それからマックを使って、その場で作業をするわけです。だから、マックを使える人と、英語がある程度できる人が行かないと辛いというのは、間違いない事実です。
僕らの一番の反省材料は、お仕事しちゃったことです。普段の作業では、ワンビジュアル、ワンコピーというようにメッセージを1つに絞ることはなかなか難しい。15秒のCMの中で、3つぐらい解決しなければならないメッセージがあります。そのクセが出て、たくさんある思いを全部1枚に閉じ込めようとしてしまいました。
コンテストをしているのだから、本当は朝広(朝日広告賞)や毎広(毎日広告賞)をやっている感覚でなければいけないのです。一番強いところだけを鷲掴みにして、それを作品に落とし込む割り切りができていなければいけなかったわけです。しかし、一晩かかって読んだ資料ですから、ケーススタディが全部可愛いわけです。もう、ものすごく可愛い(笑)。だから、全部盛り込んでしまったわけです。それが最大の反省ですね。結局、世の中を見るのではなく、クライアントを見てしまったのかもしれない。クライアントからは僕たちの作品を使いたいと言われたのですが、ある意味、さらに落ち込んでしまいました。
その年はセックスを扱った表現が1位から3位までを独占していました。それを見た瞬間に、日本人にとってセックスは秘められたものであり、広告にうまく取り上げるのが苦手なんだとも気づきました。

中山幸雄氏