2006年カンヌ国際広告祭
|
電通2CD局 アートディレクター
大嶌 美緒
電通4CD局 コピーライター・CMプランナー
佐藤 玲彦
広告祭会期中に催されるヤングクリエイティブコンペティションは、今年からグラフィック部門とサイバー部門に加えて、フィルム部門が新設されました。
グラフィック・サイバー部門と同様に、フィルム部門も28歳以下のクリエーティブが対象で、日本では国内予選があります(今年は73チーム参加)。今回は、私たちが参加したフィルム部門を中心にレポートしたいと思います。
フィルム部門とは何か? オリエン〜
さて、第1回フィルム部門の課題は「カンヌに出張でやってきたビジネスマンに、今度は休日にパートナーと来ようと喚起する30秒CMをつくりなさい。」(原文:Produce a 30 second commercial that motivates business travelers to bring their partner to Cannes for a weekend break.)というものでした。むむむむ。
日本の予選では、30秒CMのコンテを提出して審査する体裁でしたが、本戦では撮影から編集まで行い、完パケのファイルを提出しなければなりません。
予選の段階からリリースされていた通り、NOKIAの高性能ムービーカメラ付ケータイ(市価10万円もする代物)が各チームに2台わたされました。編集はアップル社のファイナルカットで行い、その他のデバイスは一切使ってはならないという制限でした。制限時間は、72時間です。
撮影〜編集〜提出
編集は会場内のヤングカンヌブースにあるMacでしかできません。72時間をどう使うか、という作戦をたてるまでもなく、ほとんどのチームがギリギリまで撮影をして、提出日の朝から急いで編集をする、という感じだったと思います。
慣れない機材を使うことには、すべてのチームが苦戦していました。ケータイで撮り、Macにデータを移して編集し、ムービーデータに変換する(ここでデータが壊れたりする!)。さらに、提出直前になって、最終データをケータイに戻してケータイの画面でジャッジされることが発表されたときには、現場は蜂の巣をつついたような大混乱になりました。イケメンドイツ人の狼狽しきった表情は今も忘れられません。私たちも慌ててタイトルを大きめに調整したり、音のボリュームを上げたりしました。
結果
私たちの企画は、カンヌに来てついつい遊んでしまうビジネスマンに対して、
「出張中にロケハンしちゃえ。そして次は愛する人を連れてこようよ。」
というコンセプトでしたが、冗長だったなと、すこし反省しています。
制作は、私たちはロケハンをテーマにケータイカメラでカンヌの風景を撮る企画でしたので、炎天下にカメラを片手に歩き回って撮影しまくりました。
BGMも、生演奏を探し出してマイクでひろっています。
他のチームも、小道具を用意したり、高級車を手配したり、キャスト(友人や上司か?)をそろえたり、どこに許可をとったのかわかりませんが、というか、どこにも許可なんてとってないと思いますが、歩道をパイロンで封鎖して地面にコンクリートを塗っちゃったり(!)、みんなそれぞれ根性でアイディアを実現させています。
企画の内容的には、不思議な光景→タグライン落とし、が多かったと思います。
各国の代表には、高度な編集技術をもっている人もいました。タイトルなどもグリグリ回転させたり、編集上のアイディアもありました。また、CDやiPodなどの外部デバイスは一切使ってはいけなかったのですが、しっかりと音楽を入れているチームもありました。聞くと、「自分で演奏したのさ。」とのこと。
ただ、オリエンに答えていないものが多かったことや、優勝チームの作品をみるにつけ、けっきょくは企画が勝負であることは間違いない、と思います。
ヤングカンヌで得たものとは何か?
オランダチームはADふたりのファンキーガールズ。神経質そうなオーストリアチームは、ディレクターとエディター。まだ入社1年目でとても礼儀正しく寡黙なポルトガルチーム。明らかにサッカーが得意でなさそうなブラジルコンビ。などなど、各国の若手クリエーティブたちとの交流は、大変に刺激的でした。
スペインチームは特に変わっていました。23歳と25歳のコンビは、代理店にも制作会社にも所属せず、ふだんは広告以外の仕事を主にしているそう。なにやらコンペがあるらしいから国内予選に参加した、おもしろいことはなんでもやるから、僕らは肩書きも決まってないんだ、と言っていました。なんだか、ヤングっぽい。私たちも、負けないぞっと。
すみません、唐突に終わりますが、彼らと同じ条件で、同じ空間でアイディアを考え表現を競い合った経験が、ヤングカンヌで得たいちばんの財産であります。ありがとうございました。