ライトパブリシティ
武田正文 大野瑞生 |
オリエンの際に、主催者は
「まず、予選を抜けて、この場にいることにおめでとう」と言っていた。
しかし、参加者は誰1人としてそんな甘い言葉につられず、
これからの勝負のことしか考えていない様子。
もちろん僕らも。28歳以下とはいえ、世界各国の代表チームと1発勝負。
ただの2人組のチームを国名で呼び合うなんてちょっとすごいこと。
そのちょっとすごい体験を、ここで少しだけレポート。
今年のテーマは、
「Amnesty Internationalが行う人権擁護活動に、積極的に参加したくなる広告」
オリエン時の心境を聞かせてはくれんかね?
武田:オリエンを一字一句、聞き逃すまいと緊張していた部分はありました。
大野:僕らのチームでは英語は武田氏の担当なので、僕はわりとリラックスしていました。
参加チームは去年よりさらに増えて39カ国だったようだが、萎縮はしなかったかね?
武田:萎縮はしませんでしたが、みなさんたっぷり栄養をとっているのかとても大きく見えました。
大野:日本予選よりも全然人数が少なかったせいか萎縮はしませんでしたが、おお、これがカンヌか!みたいなわくわく感はありました。
課題の内容をはじめて聞いたときの感想はどうだったかね?
武田:「人権」という視点でモチーフを探すとなると、明るい題材はありません。その中で、いかにこの広告に出会う人を明るく前向きな気持ちにさせられるか。そのジレンマがありました。
大野:社会的なテーマであることは予想していましたが、「人権」といういろいろな切り口がある広いテーマだったのですこし面食らいました。
2人のチームワークはどうだったかね?
武田:基本うまくいっていましたが、愛煙家の大野氏のタバコを吸う頻度に改めて驚きました。早死にしないことをここで改めて、祈ります。
大野:バッチリだったと思います。
アイデアはすぐに浮かんだのかね?
武田:細かい要求が多い課題だったこともあり、アイデアが出しにくかったです。結局、締め切り4時間前になるまで粘ることに。
大野:人権問題を絵にするだけでも難しいのに「積極的に活動に参加したくなる」というもう一つのポイントがあって、この2つをどうやって同居させるかという点で苦戦しました。
国内予選のときと比べてどうかね?
武田:国内予選に比べて、人権という広い範囲で括られていた題材を何にするか選ぶ難しさがありました。あと、予選のときと違ってIllustratorではなくて、InDesignによる作業だったことに少し戸惑いました。
大野:何となく想像で、海外賞だし本戦ではぶっとんだ作品がでてきて、バーンと賞を獲っちゃったりするのかなぁ、と思っていましたが、意外に地味でも丁寧にメッセージをうまいこと伝えている物が賞を取っているように思いました。そんなに根本的なちがいはないということでしょうか。
翌日の結果発表、君たちは自信はあったのかね?
武田:提出の時に他国の作品が、チラチラ見えたのですが、あまり良いとは思えなかったので、もしかしたら…というのはありました。でも、結果につながらなくて残念。2人して、きっと4位だったんだろうということにしておきました。
大野:とりあえず、発表までは、無邪気に自信を持っておくことにしました。
最後に、この大会に出場できたことは今後、君たちにどう影響すると思うかね?
武田:考えていることはどこの国も一緒。大体同じレベル。ポジティブそうに見える外国人でもアイデアがでなくて悩む姿を見て、言葉さえ通じればどこでもやっていけそうな気持ちになれました。「世界は自分が思っているより広くない」ちょっとえらそうだけど、そう思うことにしました。
大野:この大会で一番びっくりしたのは僕も、国籍がどこでもみんなレベルや考えていることはそんなに変わらないという所で、やっぱり海外はすごいわ。到底追いつけないわ。みたいなのはないと思います。その事実を肌で感じることができたのは財産で、前よりも少し自信を持つことができたかもしれません。