開演挨拶
鏡 明 氏
ACC国際委員長/株式会社ドリル
このカンヌライオンズ報告会は、過去にはさまざまな部門の紹介をしたり、日本からの審査員を何人もお招きして話をしていただいたりと、いろいろなやり方をしてきました。ですが、短い時間の中でさまざまな部門のお話を伺っても言い足りないことがあったので、2015年からはフイルム部門に特化してじっくりとお話を伺うことにしました。映像というのはどのカテゴリー、どのメディアにおいても強いツールであるのは間違いありません。そして、どこよりも早く報告会を皆様にお届けしようと、このような形をとっております。今回お話しいただく田中さんをはじめ、字幕入れなどサポートしてくださった皆様には無理をお願いしましたが、ご対応に大変感謝しております。
ぜひ、最後まで楽しんでいただければと思います。
カンヌライオンズ概要報告
カンヌライオンズ日本代表
石田 眞 氏(株式会社東映エージエンシー)
昨年(2016年)は、過去最高の約1万5千人の参加者が世界中から集まりました。
参加者の割合は年々広告主の方が増えており、参加者の約20%を広告主が占めています。今年日本からの参加者は450名。昨年の500名より減少はしましたが、それでも非常に大きなイベントであるということが言えます。
エントリー数は、今まで右肩上がりで増えていたのが少し減り、昨年の43,101作品に比べて、今年は41,170作品でした。部門別にみるとアウトドア部門が一番多くて4,716作品、フイルム部門は2,609作品でした。
審査員は全体で約400名、そのうち日本からの審査員は14名。日本の受賞数は全部で38作品。内容としてはグランプリ1、金が2、銀が11、銅24、となっております。来年は受賞数をぜひ増やしていって欲しいなと思っております。
これから変わりゆく広告業界において、カンヌを1つの指標として、皆様にはぜひ現地まで足を運んでもらい、いろいろと直接見ていただきたいなと考えております。
カンヌライオンズ フイルム部門報告
フイルム部門審査員
田中 耕一郎 氏(株式会社PROJECTOR)
フイルム部門の審査は16名で行われました。
審査員は、ヨーロッパから7名、南米から3名、北米とカナダから3名、インド・日本・オーストラリアから3名といったメンバー構成で、そのうち女性は5名参加しております。
審査期間は7日間あり、最初に3組に分かれて3日間でショートリスト候補を絞り、そのリストを元に全体でディスカッションを行い2日間でショートリストを決める。
そして、最後の2日間でブロンズ、シルバー、ゴールド、グランプリを決めるといった流れです。ちなみに、ブロンズ以上のウィナーは98本でした。
審査員長のPete FavatさんはLAとニューヨークに拠点をもつDeutschのチーフ・クリエイティブ・オフィサーです。アメリカの「truth」というアンチタバコのキャンペーンを手がけたことで有名な方で、とても寛容で人間の大きさを感じさせる人でした。
僕は、英語がネイティブな人の中で発言しづらかったんですが、彼は常に全員が発言できる様に促してくれました。とてもリーダーシップがあり、心配りのできる方でした。
彼が掲げた審査基準はとてもシンプルで「BRAVERY」、勇敢さを持ったブランド、そしてフイルムを積極的に評価しようということでした。
彼のキャリアを見ていると、これは自身の信念から出てきている言葉なんだと感じました。
僕は、国際的な広告賞の審査員はこれで6回目なのですが、審査員長が言った審査基準はほとんど覚えていないんです。
一方で、矛盾する様なことを言いますが電通のクリエイティブディレクター・古川裕也さんの言葉を印象的に覚えていて、審査基準というのは常にこの3つであると。「フレッシュネス」新しさ、「エグゼキューション」表現の完成度、「エレガンス」ブランドとの結びつき。
ピートの言う「勇敢さ」と言うのは、この「フレッシュネス・新しさ」に対して、一つの見方を与えていると言うふうに僕は捉えました。
同じ新しさの中でも、勇敢さを持った新しさを評価しようと言うことです。
また、今年のカンヌのクライテリアとして「ジェンダーイクオリティ」というのがありました。全部門の審査員に、女性に対してのステレオタイプな表現は充分に注意してほしいと。
実際に、この視点によって外された作品、逆に評価された作品もあります。
ある女性審査員の1人が、ショートリストが決まったタイミングで、このセレクションはアンフェアだと。男性の目線で選ばれているんじゃないかというコメントがあり現場の空気が変わりました。それで、その後の審査の方向も変わっていきました。
フイルムのカテゴリーは6つです。①TV/Cinema Film ②Online Film ③Viral Film ④Screens & Events ⑤Branded content & Entertainment ⑥Use of film。
今年は、フイルム部門はナイキの圧勝で、全部で11本選ばれました。