―ダイジェスト収録―
【司会】
中島信也 氏
株式会社東北新社
プロフィール
1959年福岡県生まれ大阪育ち。武蔵野美術大学卒。多くのCMの演出を手がける一方で東北新社取締役を務める。'83「ナショナル換気扇」で演出デビュー。
数々のCM賞を受賞。主な作品に日清カップヌードル「hungry?」('93カンヌ広告祭グランプリ)、サントリー「燃焼系アミノ式」('03ACCグランプリ)、 サントリー「伊右衛門」('05ADCグランプリ)、資生堂「新しい私になって」('07ADC会員賞)、NTTドコモ「ひとりとひとつ」(第40回(2010~2011)フジサンケイグループ広告大賞メディアミックス部門グランプリ、日清ラ王「食べる男」('15ACCシルバー)、TOTO NEOREST「菌の親子」、('15ACCシルバー)などがある。 また、'10劇場用映画「矢島美容室THE MOVIE」を監督。
吉田明世 氏
TBS アナウンサー
【パネリスト】(順不同)
佐藤章 氏
キリンビバレッジ株式会社
プロフィール
1959年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。'82年キリンビール入社。営業、商品企画部を経て、'97年からキリンビバレッジ商品企画部へ。「生茶」「FIRE」「アミノサプリ」などを開発。その後、'06年にキリンビバレッジのマーケティング部長、'08年にはキリンビールのマーケティング部長に就任し「キリンフリー」を開発。11年九州統括本部長となり『世界一の九州を作ろう』のスローガンの元、世界遺産誘致活動を行う。'14年3月から代表取締役社長。
杉山俊輔 氏
ダイハツ工業株式会社
プロフィール
1976年 静岡生まれ 1999年 ダイハツ工業に入社。部品部・国内企画部を経て、2007年1月より国内企画部 宣伝室(現 国内マーケティング部 宣伝室)に所属。
車種担当としてTVCMや各種プロモーションから、カタログ等販促ツールの制作まで、車種コミュニケーション戦略全体を担当。現在は車種戦略実行グループ グループリーダー
今までに担当した主なキャンペーン:タント(2代目・3代目)、ムーヴ コンテ(カクカクシカジカ)、ミラ イース、企業キャンペーン(第3のエコカー・くらしの真ん中でクルマを考える。)、ウェイク 等
篠原誠 氏
株式会社電通
プロフィール
1972年三重生まれ。クリエイティブ・ディレクター。テレビCMを中心としながらも、店頭やデジタルなどを含めたキャンペーンの構築まで。主な仕事にKDDI「au三太郎シリーズ」、キリンビール「のどごし夢のドリーム」、家庭教師のトライ「教えてトライさん」、富士フイルム「写プライズキャンペーン」、アクエリアス、パイロット、エステー、ジャンボ宝くじ、ホットペッパービューティーなど。主な受賞は、カンヌフィルム部門ブロンズ、Ad Fest金賞など。
佐藤夏生 氏
株式会社HAKUHODO THE DAY
プロフィール
1996年博報堂入社。マーケティングプラナーを経てクリエイティブディレクターに。2013年ブランディングスタジオHAKUHODO THE DAYを立ち上げる。
メルセデス・ベンツ、ブリヂストン、アディダス等のグローバルブランドから、カゴメ、スタートトゥデイ(ZOZOTOWN、WEAR)等の国内ブランドのマーケティング、ブランディング業務。CIからプロダクト、店舗、空間、広告キャンペーンまで幅広くソリューションを開発する。
最近では、Mercedes-Benz Connection事業コンセプト、Mercedes-Benz GLA×Super Marioコラボレーション、コーディネートアプリWEAR開発 等
【進行】
中島: みなさん忙しい年の瀬にようこそお集まりくださいました。司会を務めますのはACC賞元審査員の、審査員はずれてから司会だけになってしまったんですけども。CMのディレクターも務めております、中島信也です。
吉田: TBSアナウンサーの吉田明世と申します。今年のテーマは「やんちゃなクリエイティブ」です!
中島: やったーすばらしいテーマですね。我々はコマーシャルを毎日作っていますが、モチベーションはみんなをびっくりさせようとか、これで世の中動かしたるぜとか。そのやんちゃ心が元気なクリエイティブを作っているのではなかろうかということです。
吉田: それではみなさんから、自己紹介とともにご自身が影響をうけた「やんちゃ」だと思うCMを教えてください。
佐藤(章):私は営業から商品開発や広告という世界に入りました。「hungry?」というカップヌードルのCMに衝撃を受けまして。その前に好きだったのは哲学するサルで、ソニーのウォークマンのね。こういう広告に度肝を抜かれて、もっとやんちゃしなきゃいけないと自分の仕事に活かしてきました。
杉山: 宣伝室で仕事をするようになって9年目になります。一つだけ心掛けているのは、素人代表というか、お茶の間の視点で作ることを常に心がけること。印象に残っているCMは、自覚はないのですが祖母に言われたのが、ペヤングのもいっちょいく~?を話し始めたころから繰り返していたようです。
篠原: CM企画やコピーライティングをやって、今クリエイティブ・ディレクターをしている篠原といいます。僕が好きだったのは湖池屋スコーン。佐藤雅彦さんの連呼モノで、今でも忘れられないくらい強いCM。あれで実際僕スコーンを買った覚えがあって、ちゃんと物が動いていたなという印象がある。今でも、そのCMが物やサービスや企業に影響を与えているかということが、クリエイティブに入る前の感覚として大切にしています。
佐藤(夏):博報堂で17年、で、3年前にHAKUHODO THE DAYというブランディングの会社を立ち上げました。そのきっかけが、2003年のiPodのCM。踊っているシルエットが話題になったCMですが、あれを見て、メチャクチャカッコイイ!なんでこんな簡単なことが思いつかなかったんだろうと思ったんです。でも一番感動したのは、イヤホンが白いってことになんです。CMの中ではなく、商品のイヤホンです。それまでイヤホンといえば黒かシルバー、付けていてもどこのメーカーのものかわからなかった。白くしたことでappleとわかり、ユーザーがメディアになった。その時に、単にCMだけじゃなくて、イヤホンを白くするのもクリエイティブだし、ソリューションだし、マーケティングだし、ブランディングだなと。CMも効くけど、CM以外にもクリエイティブの役割が広がったぞと感じたんです。10年くらいそういう仕事を、試行錯誤、失敗したりしながら、少しづつカタチになって、HAKUHODO THE DAYをつくりました。
吉田: ちなみに中島さんがやんちゃだと思うCMは
中島: 川崎徹さんというCMの神様がいまして、彼が作るものというものは、お茶の間目線。この頃広告は自画自賛だったんですよ。でも川崎さんは「ハエハエカカカキンチョール」とか、言葉がクライアントをもちあげない。むしろ蔑むくらいで、お茶の間の共感を呼ぶという。よく考えたらすごく難しいことをやってたんですけど、この方のCMというのはやんちゃやなと。
言ってみればやんちゃというのは、まじめの裏返し。川崎さんもすごいまじめな方で、出てきたものがやんちゃという。やんちゃを辞書で引いてみますと、「子どもがいたずらやわがままで大人のいうことを聞かないこと」。これ聞くと何人ものクリエイターの方が頭に浮かぶんですけどね。今回は、クライアントや上司の顔色ばっかり窺ってないで、自分がいいと思うものに突き進むということかなと思います。
吉田: そういう方が面白いCMを作られるんですか?
中島: 広告の企画の決定には、すごい手続きが踏まれます。宣伝部長がいて役員がいて社長がいて、みんながいろんな意見を言ってくる。それを聞き入れているうちに何の意味もなさなくなってくるというのが広告の普通なんです。それを突破するためには、やんちゃじゃないと。子どものように信念をもって突き進んでくるというのが大事なんじゃないかなと。
吉田: それでは、4名のパネリストの方に、やんちゃなクリエイティブ作品をご紹介いただきます。
〈佐藤章氏による作品紹介〉商品名:FIRE/生茶/聞茶/アミノサプリ/キリンちびレモン
佐藤(章):「ちびレモン」は、佐藤可士和さんが小さいキリンレモンを作りたいとプレゼンしてきてできた商品であり、広告なんです。名前、パッケージ、広告も全部考えてくれないかと言ったら、可士和君は「全部僕ですか、そんなことしていいんですか、僕ADですよ」というので。いやいやいや、ADもCDもプランナーもないですと。このテイストは彼じゃないと出ないと思って。全部自分でやるっていうのの走りじゃないでしょうか。
中島: 商品開発からブランディングから全部一手にやるという。それまでは、「ADですポスター作ります」ぐらいのイメージだったんですよね。
佐藤(章):そのころはまだ縦の壁を壊しちゃいけない、機能の役割分担が必要なんだという先入観がある時代でした。
中島: 可士和さんとの最初の出会いですか。
佐藤(章):最初です。今でも付き合いは続いていて、日ごろからブランドの悩みや、会社全体がどうあるべきかということを話します。課題を見つけ合うというか、壁打ちというんですかね。課題を決めずに話しながら、具体案を言い合っていく。例えばPR戦略もやろうとか、こんな売り場を作ろうとか、統合的にやらなきゃいけない時代かもしれないねと、彼と話しながら作ってきました。
中島: 統合というのは今ひとつのキーワードになってますね。章さんが宣伝部長時代の作品を見せていただきましたけども、宣伝部長とクリエイティブが同じ問題を解決していくのは、面白くて効果的。宣伝部長は会社の意思を伝える立場だけれど、会社に対してチャレンジングな宣伝部長さんがいるだけで、面白いことになる。
佐藤(章):成功した例を振り返ると、メーカーのオリエンシートとかそういうことより、まずクリエイターの方と信頼関係を作って、話の中から「今のがオリエンかもね」「じゃこういうのどう、ってのがプレゼンかもね」という関係がいかに築けるか。その方が勝率が高い気がしますね。というのもやんちゃなのかな。
中島: 杓子定規に官僚的に進めるのではなくね。腹を割って、ひざを突き合わせて問題解決にチャレンジしていくやんちゃ精神ですね。
吉田: 続きまして杉山さんお願いします。