広告人というよりも
人間としての視野が広がった
司会● 今年はヤングコンペに、サイバーと一般の部門がありましたよね。
今井● 私たちは参加しませんでしたが、エイズという全く同じブリーフィングで、プレス・アンド・ポスター部門に1日かけ、同じメンバーが同じ課題で次の日にホームページまたはバナー広告を作るということなのです。賞品も来年のカンヌにタダで行けるのではなくて、G3がもらえるだけでした。
司会● 今井さんにとっては、去年の参加と全然違う感じでしたか?
今井● フィルムの作品は去年の方が面白かったですね。でも、コンペは本当に面白かったですよ。3日間の合宿で、自分たちにこんな引き出しがあったのかという感じでした。ただ、会社でやっていることがどこかで生きてくると思っていましたが、マインド設定を変えずに同じ気持ちだとダメですね。こちらを潰せば新しい問題が出るというところから入るのは、普段の自分たちにはないことです。そういう意味では、広告人というよりも人間としての視野が広がった感じがしました。それは何かに絶対に役に立つと思います。
司会● 僕らがわからない視点というのはいっぱいありますよね。3年間の課題だけを見ても、すごく複雑です。
山上● エイズの問題も、日本で考えているより深刻な現状をオリエンされたのだと思います。こういうことに対して、非常に関心が薄い自分を自覚しますよね。チャイルド・レーバーの問題も初耳でした。たぶん心臓疾患の話も、裏に潜んでいるいろいろな話を聞かされ、そういう気分になったこともよくわかります。
須田● 同じ年代のヤングクリエイティブが集まって、同じ課題に取り組むことは、国が違うことも面白いのですが、日本人同士でやったとしてもすごくエキサイティングな場になると思います。多くの国では国内で予選を行ってカンヌに来ています。日本の広告クリエイティブに若者が来るようにするためにも、ヤングクリエイティブを使って、盛り上げることがいいのではないかと思います。身近に国内予選があれば、本当のカンヌはどうなのか見てみたくなります。入口が近いところにあると、若いクリエイティブの世界が広がるのではないかと思います。
山上● カンヌの本編は、エントリーしたときに勝負がついている面が非常に大きいわけです。そうではなくて、その場でプレイすることがすごくエキサイティングなものだと思うのです。本編は、カンヌを狙って作っているものもあり、条件も全然違います。ヤングカンヌのすごいところは、完全に同じ条件の中で、広告をクリエイトし、戦略を立てていくことを純粋に競うところです。それがコミュニケーションの根本だったりします。だから、大人の部もあれば面白いと思いますね。
司会● これからワールドワイドのブランドということになると、毎日がコンペティションみたいになって、当然メッセージやフィロソフィーが問われてくると思いますから、大人の部は必要ないかもしれません。次に、カンヌを体験した以降の皆さんの現在とこれからについて伺います。

須田 伸氏
(博報堂)