au三太郎シリーズの制作に携わり、JAC AWARD 2016にて「リマーカブル・プロダクションマネージャー・オブ・ザ・イヤー」を獲得した中村さん。プロダクションマネージャー(以下PM)としてどのようにCM制作に関わっているのか、普段の仕事から制作の裏側、抱いている本音までお聞きしました。
最高のチームでつくる「三太郎」
au三太郎シリーズには、2015年秋放映の「鬼、登場」篇からすべて関わっています。それ以前は当社の中でも決まった担当制作者がいませんでしたが、本作からはずっと同じ制作陣で作っています。みんなの関係がとてもよく、一丸となってひとつのCMを作りあげようというチーム感。映画を撮るような感覚に近いかもしれません。まあ、映画を撮ったことはないんですけど(笑)。
このチームは、広告会社・プロダクション・制作スタッフの誰もが、それぞれの決められた役割以上のことができる環境です。クライアントからの信頼も大きく、ネガティブチェックもほぼありません。いつも試写を楽しみにしてくださって、ありがたいです。このシリーズは、昨年について言えばおよそ30本を制作しました。1本につき撮影1週間、編集1週間とした場合、切れ間なく作業していかないと間に合いません。正直キツいのですが、監督との相性がとてもよく、可愛がってくださるのでついていける。役者さん同士も本当に仲がよく、本番ではアドリブなのか演技なのかわからないくらい。カメラマン・照明技師の方々も、映画制作経験のあるベテラン陣なので、安心してお任せしています。
マルチにわたるPMの仕事
僕のやっているPMという仕事は、CMが作られるすべての段階に関わることができます。クライアント提案用の企画のコンテ化や、監督への演出コンテ発注、スケジュールやお金の管理、ロケハン、キャスティングやオーディションなど。どの段階でも僕が口にしたアイデアが採用される可能性があり、こんなにすべてに関わることができるのは、PMとプロデューサーだけじゃないでしょうか。
以前、配役について「どうしても、こうした方がいいと思う」という意見が取り入れられたことがありました。自分の主張が採用されて作品ができたことを思うと、やりがいを感じます。あとは、田舎のおじいちゃんおばあちゃんでも知っているCMシリーズなので、「これ、僕が作ったんだよ」と言えることが親孝行になっています。
働き方と、将来
昨年までは、JAC AWARDの「オブ・ザ・イヤー」や社内の「社長賞」を獲りたいという目標を持っていました。それを一度に叶えることができて、今は制作としての目標を見失っているんですよね。次の目標を見つけるのが目標かもしれません。元々スポーツが、とくに野球が大好きなので、オリンピックの会場で上映する映像や、試合前の選手の士気を高めるモチベーションビデオを作ってみたいという願望はあります。実を言うと、第一希望の就職先は球団の職員だったんです。そこは落ちてしまいましたが、“「あおい」という友だちと同じ名前だから”という理由で受けた「葵プロモーション(現・AOI Pro.)」には通ったという。広告関係の会社を受けたのは当社だけですが、採用説明会でスピーチをしていた前社長の藤原次彦さんがかっこよくて、この人についていけば大丈夫だ!と思ったんですよね。
とはいえ、ずっとこの業界にいようと決めているわけではありません。でも、辞めていく人を減らしたいとも感じています。
PMに光を、成果に評価を
まず、「PM」という仕事にフォーカスを当ててほしい思いが大きいです。何をする仕事なのか、あまりにも世間に知られていない。縁の下の力持ちじゃないけど、泥臭い現場なので人事部に「野球部員だった人に向いていると思う」と伝えたことがあります。僕も野球部だったので、泥まみれになって練習して、理不尽なことを経験しても、試合に勝つと報われることを知っている。この仕事のいいところは、4年目くらいのPMでも実力次第で大きな仕事を任せてもらえることもある、ということです。僕は下っ端ですけど、日本一のチームの中で働いて結果を出している、その評価はほしいです。
「情熱大陸」や「プロフェッショナル」のような番組でPMという職業を取り上げて、スポットを当ててくれたらとも思いますよ。世間にこんな仕事があると知ってもらって、PMを目指す人がたくさん現れるように。
中村拓人(なかむらたくと)
株式会社AOI Pro. プロダクションマネージャー
神奈川県綾瀬市出身
1990年 5.19生まれ
2013年 日本大学理工学部卒業、
2013年 入社後、プロダクションマネージャーとして働く。
2016年 リマーカブル・プロダクションマネージャー・オブ・ザ・イヤー受賞。