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ロコ情報スペシャル!
(鹿児島篇)

「ときどき、ずっと。」で100年
鹿児島銘菓を全国に広めたセイカ食品

今年100周年を迎えた「ボンタンアメ」、昨夏のラッピング車両やウェブ動画「方言すぎる昔話」「方言すぎるおとぎ話」が話題を呼んだ、かき氷「南国白くま」等を販売するセイカ食品。
同社の玉川浩一郎代表取締役社長に、ひとつの商品を長く売り続ける秘訣やユーモア溢れるプロモーションの方針について話を聞きました。

無理することなく、消費者の目の端に居続けるために

ボンタンアメが流通菓子として発売100年を迎え、ありがたいことと感謝の念に堪えません。とにかく感謝の1年にしようということで、地元の新聞に広告を掲出しました。また、レトロなパッケージに入れた復刻デザインの「ボンタンアメ缶」を個数限定で販売。そのほかで大々的に何かする、ということは考えておりません。
最近SNSで話題になり、ありがたいことに売り切れている小売店さんもある状況です。製造には属人的な工程があるため、機械のスピードを上げれば増やせるというものでもなく、「みんなでがんばろう」と声掛けをしています。

この20年、「ときどき、ずっと。」というキャッチコピーで展開してまいりました。ここに込められているのは、消費者のみなさんに1年に1回、10年に1回でもいいので、何かのシーンで食べていただけたらという思い。みなさんの正面ではなく、目の端のほうにあるような存在を目指しています。
ボンタンアメは嗜好品なので、毎日食べてもらえるものではありません。ご飯は毎日、ラーメンは週に1度など人によって食のサイクルがあると思います。ルーレットに例えると、0、00~36までの数字の穴のどこかにボンタンアメを加えてくださったら、いつかボールが入ることもあるでしょう。その穴を2つにしたいとは思いません。無理をすることなくみなさんの1つの穴をいただけたら。

そのためにどんな広告展開をしたらいいかと、実に1年をかけて、電通さんのご協力を得て考えたことがありました。その際「ピークはつくらないでほしい」とお願いしたので、電通さんは悩まれていました。山を高くすれば、その分も谷も深くなるだろうと。嗜好品にはそういう傾向があると思うのです。
展開を考えるにあたってまず、どういう方が客層なのかと調査をしました。結果、あまりにも層が薄く広がっていて、どの層が厚いのかというデータが取れませんでした。ただ、それほどに広がりがあることは、ありがたいことだとも思っています。
ボンタンアメは、鹿児島県内の観光地にも、東京駅の販売店様でも買うことができます。だから本来、お土産物として成立しないはずなんです。でも、長年両方に置いていただけている。ある意味、ありがたい立ち位置をいただいている。テレビの『サザエさん』はみなさんにとって、「子どものとき見ていたけど、ふとテレビでやっているのを見て“まだやっている”と安心できる」存在です。ボンタンアメも『サザエさん』のように、時代の半歩後ろからみなさんを見守るような立ち位置でいくんだということにたどり着きました。それは、ずっと続いてきた当社の精神であり、そこを明確にできた広告展開の見直しだったように思います。このとき、「ときどき、ずっと。」の具体的なイメージが定まりました。
ピークをつくらず、かつ忘れられないようにする。そのためテレビCMはつくり続けていますし、「鹿児島県子ども劇場協議会」様のイベントに協賛して子どもたちに配布してもらっています。それも、もう20年。子どもたちにとって、1年に1度はもらうものとして記憶に残していただけるように。社会科見学でお招きしたり、「遠足の雨天の押さえに工場見学をどうぞ」と先生方にお話したりしています。

南国白くまのキャラクターに
親しみを持ってもらって、夏へ

ボンタンアメは地道な路線である一方、「南国白くま」のほうは少しおかしさや茶目っ気でみなさんに親しみを持っていただき、夏に向けて話題をつくっていくという戦略をとっています。
昨年夏のキャンペーン「おいしい避暑地」のラッピング車両(福岡市地下鉄七隈線)は、福岡で初めて床面広告が採用された事例でした。

避暑地を思わせるラッピング。床面は渓流のせせらぎで、
窓上ポスターには涼し気な緑や青空が表現されている。
これに先駆け、テレビCMシリーズ「おいしい避暑地」が放映された。

結果的に毎夏屋外広告を展開していますが、とくに屋外広告ありきで取り組んでいるわけではありません。この30年間、博報堂さんに南国白くまのプロモーション広告を継続してお任せしています。「テレビ」「ウェブ」「その他目新しいもの」と提案していただき、その中かで我々の手の届くところのものを選択すると、毎夏屋外広告を掲出することになるという状況です。
我々は広告に詳しくないので、毎年のようにまったく新しい広告展開をしていくつもりはありません。博報堂さんにご相談をはじめた当初何年かは、「工場も売り上げも見せて共有するので、売り上げが上がらなかったら共同責任ですよっ」というくらいガッチリと組んでいただきました。その際に世界観を共有し、今もそれに合ったご提案をしていただいています。
そのとき施策の一つに、南国白くまくんにキャラクター性を持たせ、広めて愛されるという路線を引きました。あれはホッキョクグマではなく、“南国白くま”という架空の動物です。鹿児島弁を話し、なんだかしょうがない感じのキャラクター。これをテレビCMやウェブ動画で表現をしながら、夏に向けて毎年展開しています。今年の施策はまだ決定していませんが(2025年4月上旬時点)、どんなものになるか楽しみにしていただけたら幸いです。

話題の「方言すぎる昔話」
方言が差別化のツールに

テレビCM「方言すぎる昔話」「方言すぎるおとぎ話」※1は、ウェブでロングバージョンを展開しています。鹿児島弁で語られるので、テロップを出さないとみなさん言っていることがわからない。種子島篇、奄美大島篇など離島バージョンもつくりました。こうなってくると、私どもでもテロップなしでは理解できません。

方言すぎる昔話「桃太郎」
方言すぎるおとぎ話「浦島太郎」

鹿児島県は小さいと思われがちですが、実は離島を入れれば南北に600㎞。海で隔離されていることもあり、距離なりに言葉や文化の違いが大きいのです。
以前は方言が恥ずかしいという認識があったかもしれませんが、わざと方言で話すタレントさんがいたり、テレビ番組で取り上げられたりと市民権を得てきました。方言がひとつ差別化のツールとして使えるようになったことは、地方出身者として嬉しいことです。
「氷白熊」を謳う商品は何社かから発売されていますが、当社が最も古い昭和44年から。もとは戦前からあった氷菓子で、カップに入れて流通させたのは我々が最初かと思います。
全国へ出荷していますが、まだ点と点といった感じ。少しずつ増やして、いずれ面にしていけたらと考えております。

※1 南国白くま「方言すぎるおとぎ話」テレビCMシリーズは、2022 62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSのフィルム部門AカテゴリーでACC地域ファイナリスト(九州・沖縄)を受賞。

■各動画は、セイカ食品株式会社のYouTubeチャンネル「南国白くまプロモーションNOW!」にてご覧いただけます。

セイカ食品株式会社
代表取締役社長
玉川 浩一郎

セイカ食品株式会社 代表取締役社長 玉川浩一郎
商社勤務を経て1994年セイカ食品株式会社に入社。2007年に代表取締役社長に就任。
セイカ食品株式会社は設立106年。菓子・アイスクリーム・冷凍食品の食品卸売業を主軸に、「ボンタンアメ」や「南国白くま」の食品製造も行う。