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『4K・8KTV研究会』
~4K放送のロードマップと4K番組制作の現場・マルチコプター運用について~

 

ACC技術委員会では、2015年3月に4K放送のこれからの実施予定や派生する新技術などについて、研究会を行いました。
ここ半年ほどの間に、家電販売店の店頭に「4K対応TV」の姿が、ちらほらと見られるようになってきました。2015年3月にはそれまでの実験放送(Channel4K)に続き、CS商用チャンネル(スカパー!4K)、4月には一部の光ケーブルTV内での配信がスタートします。
しかしその一方で、地デジやBSについての実施予定や、チューナーやアンテナなどの受信環境のことなど、総合的な「4K放送ロードマップ」が意外に把握できていない、とのことから、会員社であるテレビ朝日の八幡委員にご協力いただき、4K放送ロードマップの解説と番組制作レポートを、また4K直結技術ではないが、4K時代の撮影テクノロジーの一つとして、最近話題のマルチコプター(ドローン)による空撮運用の実際を、スタジオエンデバー空撮事業部に、それぞれ解説いただきました。

1. 4K放送実施のロードマップ


   講師:㈱テレビ朝日 技術局 技術戦略部 兼
  総合編成局 編成戦略部 先進技術担当部長 藤田 和義 氏

 

藤田氏からは、2012年7月の総務省「情報通信審議会」での提言から、
昨年9月のロードマップ公表に至るまでの「4K・8K推進のためのロードマップ策定」の経緯と現在の取り組み、および今後の課題について解説いただきました。
講演項目は以下の通り。

・4K・8K推進のためのロードマップ策定経緯・会合について
・ロードマップのポイント(図-1)
・試験放送、実用放送開始スケジュール
・試験放送「Channel4K」・主なコンテンツ紹介
・CS放送・IPTV・ケーブルTVの4K実用放送
・「スカパー!4K」「ひかりTV4K」のコンテンツ
・4K・8Kロードマップ実現に向けての課題


お話の要点を大きくまとめると、以下のようなことになるかと思います。
■4K放送は今後CS・IPTVから、BS放送にかけて展開されていく。当面地デジの4K化は予定されていない。
■2015年4月時点で、CSとIPTVで4K実用放送を見ることができる。
■BSの4K放送電波は、円偏波という方式を使う予定で、右回り(右旋)と左回り(左旋)の電波を一緒に送信する。しかしこの方式は、右旋・左旋偏波を両方受信するために2組のアンテナ配線が必要になるなど、まだ課題が残る。

その他、4K8Kの高画質を真に体感するにはそれなりに大型画面のTVが必要 (=ある程度の広さの視聴場所が必要)など、意外に受信側(家庭)の「インフラ整備」が必要な部分があるように感じました。
しかしとにかく、4K放送は着実にスタートしており、街の家電店等で実際の4K画質を見て確かめることができるステージにきた、ということを確認することができました。

2. 4K映像制作の実例と、ハイブリッドキャスト技術を利用したCM展開例


  講師:㈱テレビ朝日 技術局 技術戦略部 小山 恭司 氏


引き続き、同じくテレビ朝日の小山氏からは、4K映像を視聴できる専用受像機をご用意いただき、4Kカメラで撮影した「全英オープンゴルフ(2013年)」のハイライト映像等を視聴しながら説明いただきました。
講演内容の項目は以下の通り。

・テレビ朝日4Kコンテンツ制作これまでの取り組み(図-2)
 -2011年から2014年までの番組事例について紹介
 -実際の4K品質でのハイライト映像集紹介
・ハイブリッドキャスト技術を利用したCM展開例(図-3)
 -放送とインターネット通信を連動したサービス
 -コンテンツとリアルタイムに連動した双方向のサービス
 -スマートフォンと連動させることで視聴者と様々なやり取りが簡単に可能


■以前から言われていることではあるが、4K映像の持つ情報量はすさまじいものが ある。大画面での視聴にも耐えるため、広い視角による没入感、臨場感も大きい。 映像制作にあたっては、見せたいもの以外をきちんと省略する、または画面のすべてに ピントを合わせて視聴者に注視するものを委ねる、などの工夫が必要。
■ハイブリッドキャストのCMへの利用は新しい試みである。視聴者からのダイレクトな反応を得ることのできる可能性が広がる。ただし現在ではまだまだ利用者も少なく、開発と普及の余地を残す。

質疑応答の時間では、ハイブリッドキャスト技術を利用したCMではどのくらい反響があったのか?また4K放送になった時の収録メディアや放送局のCMバンク対応、アーカイブの仕方などについて質問があり、活発な意見交換が行われました。

さらに、ニューストピックとして、「スカパー!4K」の4K-TVCMを御紹介いただきました。これはおそらく日本初の"4KCM"ではないかと思われます。 ※家電店店頭等で実際に視聴することができます。

3. マルチコプターによる空撮運用の解説


  講師:㈱ビデオミックスラボ スタジオエンデバー空撮事業部 稲葉 裕之 氏


4K技術の発達に伴う映像機材の進化により、マルチコプターによる空撮は、昨今、映像業界で大変話題になっています。そこで今回は、この空撮用マルチコプター(ドローン)について、機材の説明と、実際に撮影された映像及びCM作品を紹介いただき、運用上の注意点等を合わせて解説いただきました。
講演内容の項目は以下の通り。

・取扱い機材の説明
-DJIファントムについて(図-4)
-DJI550について
-DJI 800について
-Tarot960について
・撮影フッテージ試写
-工場空撮(DJI800NEX7)(図-5)
-イベント撮影(DJI550GoPro)
-ゴルフコース撮影(DJI800NEX7)(図-6)
-人物をフューチャーした撮影
−特殊な環境での撮影(トンネル内での空撮)(図-7、図-8)

撮影フッテージ試写では、マルチコプターによる空撮のいくつかの事例を紹介いただき、
そのうえで以下のような注意点について触れていただきました。

■最近、マルチコプターを使用する撮影において、墜落や操作不能などのトラブルが起きているが、そのようなケースではこれらのシステムの手軽さや安価さゆえに、 ラジコン玩具を扱うような安易さでオペレーションを行う姿勢に問題がある。
■マルチコプターはれっきとした「飛行機」であり、これを確実に扱うには、当然の ことながら空撮の基本ノウハウを持つスタッフに相談することが不可欠。
■この空撮システムを利用する際には必ず事前のロケハンが必要あり、十分なスタッフ体制が確保できるスケジューリングが大切。

その他にも特殊な環境では、オペレータースキルの重要性や複数のスタッフ体制などについてもお話いただきました

今回の研究会は少々盛り沢山な内容でしたが、多様な各方面の技術革新をあらためて見渡すことのできた有意義なものであったかと思います。

以上

文:勝田正仁(技術委員会委員長)