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『字幕CM研究会』
~字幕表現のケーススタディ~

開場風景

ACC技術委員会では、2015年7月にTV-CMの字幕表現について研究会を行いました。

2015年4月、字幕付きTV-CMの暫定搬入基準が民放連より発表され、字幕CMの運用が本格的に始まりました。これまでは試験的に限定されたCMに付けられていた字幕が、今後はあらゆる種類やパターンのCM素材に付くようになっていく予定です。
TV-CMにおける字幕の付け方には、搬入基準で様々なルールが設けられています。
また、ルールとしては定められていないが、字幕表現上の慣例として定着しつつある「作法」も出来てきているようです。
そこで今回の研究会では、現在もっとも数多くの字幕CM制作にかかわり、数多くの現場事例を体験されている株式会社デジタルエッグを訪れ、実際の作例とケーススタディを多数見せていただきました。

※TVの字幕は、一般の人々にも向けた、病院や喫茶店などのパブリックスペースでの視聴に活用されている例もありますが、
今回の研究会では、あくまで聴覚障害者の方が見たときにどう伝わるのか、という点に絞って議論しました。

字幕表現のケーススタディ

講師:株式会社デジタルエッグ ビットビジネス部 成瀬 友弥 氏

講師:
株式会社デジタルエッグ
ビットビジネス部 部長
成瀬 友弥 氏

1.
基本的ルールのおさらい

CM字幕の2大基本ルール:
  • CMの冒頭と終わりの1秒間は字幕を表示してはいけない。
  • 1枚の字幕は、2秒以上表示しなければいけない。

すなわち、15秒CMの場合、字幕を表示できる時間は最大13秒、表示できる字幕の枚数は最大6枚、ということになります。

字幕表示の技術的特徴:
  • 画面に表示される字幕のフォントは、テレビやレコーダーの機種によって異なる。
  • 字幕の規格には、ARIB規格(16:9)と、NAB規格(4:3)がある。
  • 字幕の表示タイミングにはディレイがあり、テレビやレコーダーの機種によって違いがある。

これらの基本的ルールと特徴を踏まえたうえで、字幕制作作業が始まります。
字幕を実際に入れていく際にも、大基本ルールがあります。
これらはCMが納品された後の放送局での「字幕内容の考査」の内容ともほぼ同じものとなります。

  • 「言っていないこと」「鳴っていない音」は字幕化しない。
  • 薬事、免責などのテロップには字幕が被らないようにする。
  • 実際の音声と著しくタイミングが異なるような字幕の出し方はしない。

ここまでの基本ルールと作法を守れば、いわゆる必要最低限の字幕CMを完成することができますが、作品の構成によっては、さらに工夫を施す必要があるものが多々あります。
ここからは、デジタルエッグで字幕制作を行った例から、多くのケーススタディを見せていただきました。
※今回は個別事例を取り上げる関係上、本稿内で具体的作品名、画像等を掲載することはできませんので、ご了承ください。

2.
実際の作例によるケーススタディ

ケース1 
たくさんのセリフ、音声情報
  • 5人くらいの友達グループのパーティで、各人の歓声とセリフが速いテンポで編集されている。CMの前半でできるだけ早く会話の状況を掴んでしまえるように、1枚目の字幕にできるだけ冒頭部分の会話を集めた。これによりその後のストーリーを追うのが楽になっている。
  • 全編にわたりメインナレーションが入り、その背後でドラマが展開され、登場人物たちのセリフが入っている。ナレーションとセリフはしばしば被り合う。映像からあきらかに想像できる登場人物のセリフは敢えて整理し、作品の主役であるメインナレーションをできるだけ正確に表示できるよう工夫。
ケース2 
ルビ
 漢字表記、とくに商品名や訴求点と掛けた読み方などは、音声と一緒に観れば間違いないが、聴覚障害者の方は違う読み方で受け取り、狙いが届かないことが意外に多い。
CM字幕にはルビ(ふりがな)をつけることができるので、CM字幕には積極的に使う。
ケース3 
外国語の表現
 外国人が母国語でコメントし、画面には日本語テロップが入っている。これに重複して日本語字幕を乗せる必要はないので、原語をそのまま乗せるのも考えられるが、英語以外の外国語の場合は特殊な文字が多く、字幕で表示できないことが多いので注意が必要。
ケース4 
スーパーとの重複
 字幕なしの元々の画面に入っている文字情報は、字幕化しない場合も多いが、決めの商品カットなどで、商品名のテロップに加え、ナレーションでもしゃべっている、というケースは多い。こういった場合は狙いとして設定されているアピールの強さを表現するため、敢えて字幕でも表示した。
ケース5 
複合的な要素、表現
 歌詞のあるテーマソング、出演者の会話、効果音が印象的なシズルカットが複合的に絡み合っている。この例では、テーマソングは歌い出しだけを字幕化し、「以下続く…」という形に整理。ストーリー上重要な、画面外でドアの開く音、シズルカットの効果音などは、できる限り正確に字幕化している。

最後に、委員のみなさんと成瀬氏の間で、活発な質疑応答と意見交換が行われました。
音声が聞こえる状態では若干うるさく感じる字幕も、音を絞って見てみると、適切な情報量とタイミングで字幕が入っていることがわかったり、セリフそのものよりもキーとなる印象的な効果音を字幕で説明した方が良い印象であったり、また、出演者の唇が動いているのにセリフが表示されないと大きな違和感を覚えたり、実際に試行錯誤し工夫を重ねて開発された表現ノウハウの数々は、非常に勉強になりました。

CM字幕については当初、鳴っている音、言っていることはすべて字幕化しなければならない、といったある種の誤解があったようにも思いますが、そもそもCMに詰め込まれた音情報を、13秒6枚の字幕ですべて網羅することはほとんど無理なのですから、「言っていないこと、鳴ってない音を字幕にしない」という大前提のもと、作品のキーポイントとなる音要素を的確に字幕化していく工夫が今後のポイントになることを、各委員が再認識し、今回の研究会を終了しました。

以 上

文:勝田正仁(技術委員会委員長)