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インテルから県の広報監に
「はっきり言って何がバズるかまったくわかりません」

 もともと私はインテルで市場開拓などを行っていて、行政エリアも担当だったんです。パソコンのCPUのシェアが高い企業だったので、長期的に見てパソコンを扱う業種を増やしたいということだったんですが、いつの間にやら茨城県の仕事を手伝うことに。2年県庁に常駐して「いばキラTV」を軌道に乗せる任務に就いたのち、現在の広報監に就きました。
 いばキラTVの発想は、テレビの代替としてのメディアでした。だから当初は、朝はニュースをライブ配信、夜はバラエティをライブ配信、とテレビと同じように番組表に沿ってストリーム配信していたんですね。それはネットのやり方ではないとわかってもらうのに、3年かかりました。そそれから、YouTubeに徐々にシフトさせて、今の形があります。私の息子もそうですが、今の若い人はテレビを持っていません。あっても、メインはスマホです。

当初は、YouTubeのチャンネル登録数を5万にするという目標を立てていたんです。この5万という数字は、超えるとYouTube Space Tokyoでスタジオからライブできる権利をもらえる予定だったからなんですね。でも達成して見たら、その権利が10万以上に変わっていたんですよ(笑)。

 これまで上げてきた動画を分析してみると、いばキラTVを開設して以降5年間で1万本を上げてきて、10万PVを超えたのが73本、5万PVを超えたのが144本、1万回を超えたのが520本というところ。全体の7%にすぎませんが、それでも10万を超える動画をこれだけつくっている人や企業はあまりないと思うので、がんばってるメディアだと思いますよ。
 上げればほぼ確実に10万を超えるのは、女性タレントが県内大食いグルメを紹介する「いばらきペロリ」というシリーズ。当初男性向けにつくったのですが、フタを開けてみたら女性に人気でした。意外だったのは、ねば~る君の交通事故防止啓発動画で、32万PV。はっきり言って、何がバズるのかまったくわかりません。

いばきらTV「いばらきぺろり」
いばキラTV「ねば~る君とうめねばちゃんの
「わらなっとう」で交通安全ネバよ~!」
いばキラTV「ねば~る君うめねばちゃんの
がん検診を受けるネバ~!」

「のびしろ日本一。いばらき県」キャンペーン

 これまで行政の広報活動と言えば、地域情報を地域の人々にお届けするというものでした。でも、そんな時代じゃないじゃないですか。情報をいかに外へと出して、観光に来ていただいたり、名産品を買っていただいたり、長期的には移住促進も考えたい。それにはまず、茨城のことを知ってもらう必要があります。その中で始まったのが、この「のびしろ日本一。いばらき県」という、渡辺直美さんとピースの綾部さんを起用したイメージアップキャンペーンです。ネット上はもちろん、近県のテレビ局やキー局、首都圏の駅ポスターなどに出していきました。駅貼りのコストは高額なので一瞬だけで、主に県内各所に貼ってあったりするんですけどね(笑)。

取出氏が番組で取り上げて育て、命名にも関わった人気ゆるキャラねば〜る君。
 ちょっと特殊なのが、このキャンペーンの受注元が吉本興業さんなんですよ。キャンペーンのほうも毎年コンペはするのですが、4年間吉本興業さんにお願いしました。前半2年で行なった「なめんなよ茨城県」は、県のサイトのトップにヤンキースタイルのおふたりを出してクリエイティブヒットしました。ツイッターで話題になって、拡散して。
 後半2年で行った「のびしろ日本一」では、「都道府県高校」という架空の学校に芸人さんをたくさん出した動画で70万PVまで伸びました。吉本さんと組んでいるので、芸人さんのブッキングがすごくラクなんですよ。メインのおふたり以外はその日空いていた芸人さんがキャストになって。旬の方がてんこ盛りで出ているのですが、空いていたからかなり格安で、スケジュールの調整も不要でした。

 よくキャンペーン名の由来は、ブランド総合研究所が行った「地域ブランド調査」の魅力度ランキングで全国最下位だから?と聞かれますが、そんなこと公式には認めていませんよ。魅力、あるんですから。ただね、行政のつくるものは基本的に固くなりがちですが、見てもらえないのではダメ。おもしろいというフックで、まずは人に見てもらう。その中でいかに茨城をいやらしくなく、ちょっとでも入れるか。そこがいつもせめぎ合いで。あんまりたくさんのことを詰め込みすぎると、かえって覚えてもらえないですからね。

 地方創生で各地さまざまな試みをしていますが、成功事例を真似すればいいという時代ではありません。紙で情報を得ていた世代と、若い今の人たちと、メディアミックスを考えながら両者に情報を届けられるように。トライ&エラーで戦略を立てていくしかないと実感しています。

text:矢島 史  photo:佐藤 翔