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アイデアも買い物も同じメモに一緒くた
その心は

―ノートは使っていますか?

何か思いついたとき、忘れないようにスマホのメモ帳に入れています。PCと同期していなくて、かなりアナログ的にメモしています。本当に有象無象、アイデアも買い物メモも同じように並んでいて。

例えば…… 「対決がおもしろい」は、悪者が間抜けなのはおもしろいと思って書いたんですね。
「ねこちゃんの声が実は」は、のちにコウメ太夫さんに声をあてていただきました。
「パン vs ごはん」は、トムとジェリーのようなことをやりたいなあと。
これは、薬局で買うもので……。
「スマホみてても、なにひとついいことない」は、ほんといいことないなと。

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―(笑)テーマごとに分かれていたりしないんですね。

全部一緒くたですね。あっちの仕事も、こっちの仕事も、買い物も全部混ざっている。多分、生活者として生きているときに思いついたこと、にしたいんですよね。分けると仕事になりすぎるんだと思います。プランナーとしてより、何気なく生活している人間でありたい。生活の痕跡と一緒にしておきたいんだと思います。
というのも、広告プランナー的にはいいけど生活者としてはどうだろう、という広告は多いじゃないですか。そっちに行かないようにしたい。

―もともとは広告が大好きだったじゃないですか。いやだなと思うものもあるわけですね。

つくってみると、意外と普通になっちゃうことに気づいたんです。大貫卓也さんや原研哉さんを追いかけていいものばかり見てきましたが、全体を見たら8割が普通なんだなあと。クライアントさんに寄り添うほど、生活者との距離が離れてしまう可能性がある。クライアントさんに寄り添いながらも、生活者側の視点に立てているのかが大事なんだとどんどん思うようになっていきました。

―そうですよね。普通が9割です。

難しいですよね。これだけのお金と時間を使って、見た人が好きでも嫌いでもない、覚えてもいない、あってもなくても同じようなものをつくるのが本当に怖いんです。ちょっとでも記憶に残すにはどうすればいいか、生活者の視点がすごくほしいんです。
それで企画を考えるときにしているのが、オリエンを見て最初に思ったことを忘れないようにすること。だから何かをしながらチラ見したりしないようにしています。初見の時はメモを用意して、呼吸を整えて、「よし見よう」と。最初に思ったことが、一番生活者に近いと思うので。

論理でジャンプ!斜め上のソリューション

―企画のフローを教えてください。

どの企画も同じフローで、Google ドキュメントかGoogle スライドにテキストでワーッと書きます。スマホのメモを、こちらに清書することも。そこに、「CLIP STUDIO PAINT(イラスト、マンガ制作アプリ)」でイラストを描いて付けたり。今までイメージ画像を探して付けていたのですが、探すのに時間をとられるので。

例えば、当社で短編CGアニメをつくろうとなったときに、作品化された『パンの赤ちゃん』のメモはこれです。いろんなパンを描いて。下の所が服の裾になったり、足になったら可愛いなとか。

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トイ・ストーリーのように「ものに命が宿っている」、ホーム・アローンのように「弱いものが強いものを倒す」のパターンが大好きなんです。弱い存在を自分に重ね合わせているんだなというのは、あとから気づいたんですけど。弱くてもやり方を見つけて前に進んでいくというジャイアントキリング的な部分は、これからも自分の作品に入っていくのだろうなと思いました。

―今回は、なぜにパン?

なんでだろう……あ、おばちゃんちがパン屋なんです。店番したりしていました。パンって、生きているみたいに膨らんだり、全然違う色で出てきたりとおもしろい。「寝かせる」という表現も、生き物みたいと思ってパンにしたのかもしれません。