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古川: 箭内さんは広告好きですよね?

箭内: 僕は大好きです。

古川: すばらしい、そうやって即座に言えるところが。「いいわるい」とか「意味ある意味ない」とかより、「すききらい」の方が強いもんね。

箭内: いやあ・・・大好き(笑)。僕、今日初めて古川さんとちゃんとお話するんですけど、なんて言うんですかね? いまおっしゃったように品だったり教養だったり、古川さんってみんなが駆使してるギラつきや熱みたいなものじゃない別の何かを操って乗りこなしてる感じが珍しいと思うんですよ。

古川: 言われてみると、操るべきことと操らないことは明解に区別してます。ディレクションの過程では90%ロジカルに進めますが、ほんとに大切なのは、なぜできてしまったのかわからないようなもの、完全には操れない説明不可能なものです。それを何とか引っ張り出すためにディレクションがある。ほんとにいいものって理由ないですからね。

箭内: いいディレクションですね。最後にAIについて聞いてもいいですか。古川さんの本のあとがきにも書いてあるんですが人間の仕事で最後に何が残るのか?というのはすごく重要なテーマだと僕も思っていて。

古川: AIに関しては、「仕事がなくなるんじゃないか」みたいな悲観論が出てきてしまってますけれど、僕は、AIは基本的には人間の解放、あるいは救済だと思っています。人間の歴史ってそもそも、職業がなくなって、また生まれる歴史なので。基本的には、やんなくてもよかったんだよね、という順に、仕事がなくなっていきますから。

箭内: 僕らの仕事で言うとどうなんですかね?

古川: 広告代理店の職種で言うと、最後に残るのは営業だと思うんですよ。

箭内: なぜですか、それは?

古川: 例えば、何言ってるのか全然わからない、そもそも日本語さえおぼつかないのに、やたらクライアントに信頼されてる営業部長とかいるじゃないですか?

箭内: いますね(笑)。その人のチャーミングな人柄が愛されてるというのか。

古川: そういうのは、ラーニングできないですよね。数値化法則化できないんだから。冗談はさておき、後は、ほんとにすぐれた一部の、少なくともいまはクリエイティブという名で呼ばれている仕事でしょうかね。つまり、「正しい」だけではダメなもの。
今後仕事は、自分がやるべきこと、他人にやってもらうべきこと、AIにやってもらうことの3つにクリアに分かれていきます。そこの判断をまちがえると、その組織は滅びるでしょう。これから、僕たちの仕事も、誰が考えても正しくはこうなる、みたいな仕事は何の価値もなくなる。70点平均くらいのものや、オンラインのヘルプ・ムービーなどは、AIによる過去事例からのシミュレーションによって出てくるアイデアに、とっとと委ねたほうがいい。正解としてはこうなる、数値的にはこうなる、という。でも、実はその範囲から外れたところに宝物が埋まってるはずで、本当はそれを探すことの方が、広告に限らず表現にとってはたいせつなんですよ。見つけて形にする。それは、人間の方が点数高いです。

箭内: さっきのクリエイティブ・ディレクションの話にも通じますね。効率的であると同時にモチベーションとかおもしろさが大事で、そこを両立させる能力だっていう。

古川: AIにはできなくて人間の方が得意なこともその辺に集約されていくと思います。

text:河尻 亨一  photo:広川 智基

箭内道彦(やない・みちひこ)

クリエイティブディレクター
1964年生まれ。54歳。東京藝術大学卒業。1990年博報堂入社。
2003年独立し、風とロックを設立。現在に至る。
2011年紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストでもある。
月刊 風とロック(定価0円)発行人。
福島県クリエイティブディレクター
渋谷のラジオ理事長
東京藝術大学美術学部デザイン科准教授

古川裕也(ふるかわ・ゆうや)

電通シニア・プライム・エグゼクティブ・プロフェッショナル/
エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター
1956年生まれ。1980年電通入社。
ACCグランプリ、電通賞グランプリ、カンヌ・ライオンズ40回等内外の広告賞を400回以上受賞。
ACC審査委員長、クリオ審査委員長、カンヌ4回等審査員多数。
2017より日本人で初めてD&ADアドヴァイザリー・ボード。
JR九州「祝!九州新幹線全線開業」、大塚製薬/ポカリスエット「潜在能力を引き出せ」シリーズ、GINZA SIXローンチ・キャンペーン、宝島社/企業広告「死ぬときぐらい好きにさせてよ」等。