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Vol.1

The Breakthrough Company GO
代表
三浦崇宏さん

あの人のノート、いったい何が書かれているのだろう?
世を騒がせるクリエイターの思考法をのぞき見したい。
そんな欲望で始まった新企画。第一回は、枠を超えたクリエイションが注目を集めるGOの三浦崇宏さんに本誌編集長がお話を聞きました。

ノートは頭のなかを共有するツール

―そもそもノートって使っていますか?

 37人の社員と、半年ごとに1対1の面談をしています。お互いの話をノートに構造化して書いて、その社員のキャリアを一緒に考えたり、悩みに対して答えを出すためのツールとして使います。
 スタートアップの経営者やクライアントの方とも、ここぞというときは一人でフラッと訪れて「今課題なのは」と話す。そんな時にもノートを使います。お互い考えていることは違うので、それを共有するためにノート上で可視化しています。

 あとは、スマホのメモアプリに思いついたアイデアや、インプットしたもの等をつけています。時系列で考えた順にメモが連なっているので、思考の整理にいいんですよね。アイデアを具体化していくときに役立てます。
 本やコラムの原稿を書く時も、テーマに沿ってメモをつなぎ合わせて。ツイートのためにメモを取っておいたり、読んだ本や観た映画もメモアプリにつけます。

―三浦さんは自由自在にアイデアを出しているように見えます。ポンポン思いつきます?

 アイデアが出ない、という経験はないです。たとえば「課題×ヤフートップニュース」とすればそれだけで、ブランドと13本の世の中のことを結び付けた企画ができる。それがいい企画かどうかはさておきですよ。
 アイデアがなくて困ると言う人は、最初からいいアイデアを求めているのでしょう。とにかくアイデアの数を出して、それがブランドのDNAにつながるか、コンプラ的にどうかなどは次の段階で考えます。
 マッチングアプリでも、最初から理想通りの人を探すと「出会いがない」となるじゃないですか。でも100人と会ってみたら、予想もしていなかったような人が「この人だ!」となることもある。あ、僕の経験談ではありませんよ。
 あとは、弊社のBP(ビジネスプロデューサー)やクリエイターを相手に延々としゃべりながら考えることが多いですね。そんなときもノートに書きながら説明することがあります。

三浦さんの手書きのノートとスマホのメモアプリ

「クリエイティブ×〇〇」
あたらしい掛け合わせが転機をつくる

―ターニングポイントとなった仕事について教えてください。

 1つ目は、博報堂時代に手がけた「土のフルコース」。カンヌのPRでブロンズを獲ることができました。これは、“クリエイティブとPR”がつながった仕事だったんです。バイオベンチャーの企業がつくった非常に安全でクオリティの高い土を、どうやってPRするかというときに、「食べられるくらい安全」というコアアイデアを発見して土を食べられるレストランをつくりました。

 「COGY/あきらめない人の車いす」も転機のひとつ。“クリエイティブと事業”がつながった仕事でした。今GOは“事業クリエイティブ”という概念で経営していて、それはこの仕事を通じて生まれたものです。
 売れた分の何%が入ってくる仕組みにし、クライアントとエージェンシーだけではなくベンチャーキャピタルも組み合わせて、事業レベルでクリエイティブとして貢献していく形です。
 このプロダクトに関しては、価値を単なる「足で漕げる車いす」としなかった。「あきらめない人の車いす」と顧客視点のコアバリューを発見し、それをベースにすべてのプロモーションをつくっていきました。ACCのクリエイティブイノベーション部門グランプリもいただきましたね。

―受賞は何かに影響しましたか?

 正直、独立一発目の受賞だったのでホッとしました(笑)。
 賞というのは、業界に対するディレクションだと思うんです。「ACCのクリエイティブイノベーション部門ではこういうのを褒めるよ」と方向性を指し示す。これよりすごいテクノロジーはいくらでもあったと思いますが、コンセプトをつくるという広告業界が培ってきたスキルが商品の市場を広げた。ACCが褒めたいのはこれだと言ってくださった気がして。

 3つ目のターニングポイントは、一昨年企画した「新聞広告の日プロジェクト 朝日新聞社×左ききのエレン Powered by JINS」。悩みましたが、僕自身をコンテンツとして広告のなかで使いました。有名になっていいことなんてほぼないけれど、結果として顧客に対する価値、ブランドの価値にできた。こういう戦い方ができるんだなと、おもしろさを感じました。

日本のクリエイティブを変えていく

―「どうやって実現させたの?」という難しいことにチャレンジし続けていますよね。悩むことなく突き進んでいる感じ。

 いやあ、そうだとうれしいのですが。最近つくづく、仕事って難しいなと感じています。僕らはクリエイティブなので、世界にまだ答えがないものを見つけなくてはならない。本当に難しいですよ。
 「よく実現できたね」と言っていただけた企画は、GOのシステムだからこそ成立させられたと思っています。当社では必ず、BPとCD(クリエイティブディレクター)が二人一組で事業に向き合います。初期からBPがいることで一見実現不可能なアイデアにも可能性が出てきて、BPが利益を生み出すときも「それがオンブランドか」と常にCDが判断できる。
 その意味で、自分の代表作は「GOという会社そのもの」だと思っているんです。

―クリエイター養成のためのアカデミー(The Creative Academy)をつくったりと、日本のクリエイティブ全体に寄与しようという意志を感じます。なぜですか?

 向こう10年、クリエイティブの価値は高まっていくと思っています。コンサルや銀行は、ちょっと先の未来を予測することはできても、「他者の感情を想像することで新しい可能性を生み出す」考え方はしていません。それこそが、クリエイティブ。
 資源もなく、テクノロジーは遅れ、人口の減っていく日本においてなにが勝てる筋道なのか? 昔、千利休という人が、「この器は世界の秘密を…」とか言って値段を千倍につりあげました。つまり、意味を変えることで価値をつくった。これは日本が唯一勝てる、得意分野です。ソニーのウォークマンは、「歩きながら聴く」という意味の発見が技術の価値を導きました。
 これからは効率的な論理とは真逆の、「見立て」「意味をつくる」といったクリエイティブの価値がはるかに必要になる。僕はそう仮説を立てて、それを信じているんです。

 ただ、今の日本はクリエイターが豊かになるようにできていません。大手の広告会社は基本的にメディアの会社で、クリエイターはおまけとして扱われています。
 けれど、実際そんなことはないんです。メディアの価値は減損していくけれど、クリエイティブの価値はどんどん求められていく。だからこそ、クリエイティブの力を信じる人、クリエイターになりたい人を増やしていくことが日本の成長戦略。
 この視点を持っている人がいないので、がんばろうかなと思うんですよね。日本中のクリエイターの給料を、10倍にしたい。

―10倍、でかい!

 ご著書で、「欲望の大きさがその人の才能を決める」とおっしゃっていましたね。欲望すごいなあ。それは最初からなんですか?

 博報堂に入社した時のエントリーシートが出てきて、それを見たら「入社して成し遂げたいこと」という質問に対して「クリエイターとして初のノーベル平和賞をとる」と書いているんですよ。

―でかい!最初からでかい!その目標は今も続いていますか?

 はい。そんな簡単なことじゃないと、書いたころより今の方がわかっていますけれど。でもそこを誰も考えてこなかった、というのも事実かと思いますね。
 どんな広告をつくりたいかと面接で問われたときも、「バレンボイム管弦楽団のようなことをしたい」と答えました。この楽団は、紛争中のガザ地区で突然、野外ライブを1週間催したんです。メンバーにイスラム教徒とユダヤ教徒の両方を加えたため、どちらからも攻撃できないので、この間だけ紛争が止まったというウソのような話。こういうことに魅力を感じます。

―すごいですね。

 いつもこんな高尚なことを考えているわけではありませんよ。まずは目の前の商品を売らなければいけないし、おもしろいものをつくらなければいけない。前段の話は、その先にしかありませんから。