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箭内: その例で言うと、ユニクロのCMはガーンときましたよね。50色のフリースが抽象的な空をぐるーっと回るのもすごかったけど、僕、一番好きなのは天本英世さんが出演されてたCMなんです。天本さんのストレートトークでライフスタイルを問うというか、「いまを大事に生きよう」ってメッセージがすごく伝わってきて。ああいうものは、やっぱり社会に何を問いかけるかをしっかり突き詰めた先に出てくるものだし、商品のヒットという結果もついてくるじゃないですか。

タナカ:天本さんが「もう明日死ぬかも知れません」って言うんですよね。広告に「死」という言葉を持ちこんでいる。あの頃のシリーズでは結構そういう要素も入っていて、本当のことをちゃんと表わそうとしていました。いまでこそ「ダイバーシティ」ってことになるけど、トランスジェンダーであったり在日外国人の人もキャスティングして、その人たちへの同情を誘うのではなく、ヒーローとして捉えようとしたんです。その少し前にはナイキで「盲目のジャンパー」などもつくっていましたが、まだまだ時代的にそのような事に触れられるブランドは少ない中で、ユニクロの場合、「すべての人に良いカジュアルを」っていうのをすでに掲げてましたから。

箭内: やられてましたね、ナイキのキャンペーンも。

タナカ:その頃からですよね。自分がアートディレクターからクリエイティブディレクター、さらに言うと企画者として、企業の仕事をするようになったのは。それ以前は、作品を広告に使ってもらう形ではあったんですけど、キャンペーン全体の構築という意味ではナイキが初めてだったかな。ただ、ナイキはすでにブランドが確立してましたから。ワイデン+ケネディのチームの人たちと、トニー・ケイのところにフィルムのプランを持ち込んだりして、そういうチームと一緒に仕事ができるんだというのは喜びではあったんですけど、ユニクロはまた違ってね。もっとチャレンジングだし、エキサイティングだった。土台から一緒につくり、成長していくことになるし、日本から世界に向けての発信になるだろうなと。

箭内: この話の流れで、今日はタナカさんがクリエイティブディレクターというものをどう捉えてるのか? をちょっと聞いてみたいなと。

タナカ:クリエイティブディレクターは、その広告におけるクリエイティブの最高責任者というか総監督みたいな感じじゃないですか。すると、やっぱりスキルとしてクリエイティブのすべてに精通している必要がありますよね。まずクライアントと一緒にやろうとしているそのプロジェクトの社会的な価値や意義を捉えることが重要で、それをコンセプトやアイデア、ビジュアルと言葉で表現するためのアートディレクションからコピーライティングまで熟知している必要がある。プロデューサー的なお金と時間の管理もわかってなくちゃいけない。

箭内: すべてを知ってる人ってことですよね。

タナカ:特に海外はそういう人が多いですね。日本だと会社の中での役職として、クリエイティブディレクターを位置づけることが多いんですけど、海外のエージェンシーってメディアバイイングをしてないから、極端に言うとクリエイティブだけで勝負するじゃないですか。だから、クリエイティブでサバイブするのに必死なんですよね。海外のクリエイティブディレクターはクリエイティブに対する造詣がとても深い。コピー出身、アート出身を問わず、全体を網羅した能力を持ってます。コンセプチュアルなことからアウトプットの感覚的なことまでふつうに話ができる。