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グラフィックデザイナー、ハンドレタリング・サインペインティングアーティスト
Letterboy

本名Peter Liedberg。スウェーデン出身、東京在住のハンドレタリング・サインペインティングアーティスト兼グラフィックデザイナー。Letterboyとして日本を拠点にインターナショナルにクライアントを有し、「Instagram calligraphy by Letterboy」と題した動画で注目を集めている。滑らかな筆の流れと、生み出される多種多様な文字の数々、その制作風景には時が経つのを忘れて眺めてしまう魅力がある。この4月、同氏がアジア初のサインペインターの集い「Letterheads」を東京で開催した。その意義は、ハンドレタリング・サインペインティングの魅力は、日本の広告カルチャーの印象は。盛況を収めた「東京Letterheads」のあと、彼の事務所を訪ねた。

技術をオープンに共有するLetterheads

―東京にLetterheadsを誘致したねらいを教えてください。

 Letterheadsは1975年にアメリカのサインペインター7人が始めた集まりで、お互いの知識や技術をオープンに共有しようというのが目的です。徒弟制度の中でなかなか下働きから抜け出せなかった彼らが、技術を人に見せない風潮を打破したいと。ですからモットーは、相手がベテランでも初心者でも、同じように接して技術を共有することです。このムーブメントは世界中に広がり、今日まで続いています。デジタルの台頭で衰退しかけた時期もありましたが、7~8年前からまた“手描きのよさ”が見直されて盛り上がってきました。
今では年に1~2回ほど世界のどこかで開かれていて、各国からサインペインターが集まり交流しています。私も何度か参加するなかで、その意義に共感し、また「仲間たちに東京に遊びに来てほしい」「日本を見る機会を持ってほしい」「日本の仲間にもこのイベントに参加してほしい」という気持ちから手を挙げました。Letterheadsには組織やリーダーがないので、やりたい人が自主的に手を挙げて、それにみんなが協力していくという形で催されます。

―サインペインターは古くは徒弟制だったようですね。ピーターさんはどのようにしてサインペインターになったんですか。

 古くは弟子入りする場合もありましたし、サインペイントの学校に通いインターンのようにしてプロに技を習うのがサインペインターの主な道筋でした。仕事が減ってきたために、私の知る限り専門の学校は今やロスに1校しかありません。ただ、近年また徐々に仕事が増えてきていて、始めたい人はサインペインターを探して訪れ、技を学んでいます。
 私はオーストラリアの大学でグラフィックデザインを学んでいました。その後地元スウェーデンでグラフィックデザイナーとして働いていました。あるとき、ネットの中で手書き文字をデザインに取り込む方法を紹介しているものを見つけ、やってみようと思いました。あれこれと道具を買ってきて、手書き文字に特化した練習を始めたのが発端です。子どものころに母親が趣味でカリグラフィーを描いていたのを見ているので、その影響もあるかと思います。その後文字に特化したデザインへと移行していきました。並行して友人とコペンハーゲンでファッションに関する店も営んでいました。

 その頃にサインペイントに興味を持ち、ヨーロッパの各所で開かれるワークショップに参加し、独学で学びながら、練習を続けるようになりました。教えてくれる人によってスタイルが違うので、新たな技術や発想を得ることができます。ボストンに住む日本人のサインペインターの友人を訪ね、アトリエで勉強したこともありましたよ。これから2週間後にも、ニューヨークで開かれるワークショップに参加する予定です。今回Letterheadsに参加した技術に習熟したメンバーも、いまだにさまざまな人のワークショップに参加して技術を高めていこうという考え方です。人の技術に直に触れるほど、日々の練習を重ねるほどに、技能は高まります。

―それぞれのスタイルには、地域性は関係するんですか?

 住む地域や、誰に教わったかは、もちろんスタイルに影響します。同じ筆記体を描いても、印象が変わります。同じ曲でもピアニストによって違って聞こえるように、サインペイントを見れば誰が描いたのかわかる場合もあります。また企業向けのカチッとした書体が描ける人、ウェディングに向いたスタイルが描ける人など、それぞれの得意分野があります。できる分野が増えれば、できる仕事の幅も大きくなります。

―ペインター同士の交流では、スタイルだけでなく、仕事の情報も交換されるのですか。日本にサインペインターは多くはないと思うのですが。

 はい。海外からの友人からはカリグラフィーやレタリングの仕事が日本にもあるのか、海外と日本では違うのかと聞かれます。「普段何種類のデザインをクライアントに提案しているの?」など具体的な情報交換も。普段の仕事の際には、クライアントさんの要望を聞いて、希望に沿ったデザインの提案をさせてもらえている。とても仕事がしやすい環境にあると思います。同じジャンルで海外から来て私のように仕事をしている人はなかなかいないけれど、日本人なら同業者はいます。今回一緒にLetterheadsをやった仲間たちもそうです。私のようにアルファベットでのサインを描いている人は十何人と限られる人数ですが、日本語でとなるとサインペインターというジャンルではないところで幅広くいると思います。鉄道プレートを描いている職人さんなどもそうですね。