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第十五回 箭内道彦 ✕ 安藤輝彦



箭内: 僕、真のクリエイティブディレクターと言える人って、日本に3人くらいしかいないと思っていて、実は安藤さんはその中に入ってるんですよ。

安藤: へえー、早く言ってくれればいいのに(笑)。

箭内: 前から言ってますよ! でも、今日は過去の栄光というより、現在の輝きということでおうかがいしたくて。いま安藤さん、大広の専務なんですよね? クリエイティブディレクターであることと、会社のマネジメントって同じなのか違うのかを聞いてみたいんです。
リーダーシップという意味では安藤さん、非常に魅力ある上司じゃないですか。みんなにちょっといじられるような可愛らしさがあって、メシも腹一杯くわせてくれて、でも、やるときにはガツンとやって。それでもダメなやつは切り捨てて…(笑)。

安藤: そうかなあ?

箭内: 実は冷たくないですか?(笑)。安藤さんのリーダーシップに、僕は前から注目してるんですけど、クリエイターって社長とか専務に向いてるんですか? それとも個人力?

安藤: うーん、クリエイティブと経営ね。共通するのはやっぱり「方向舵をどう切るか?」ってことでしょう。経営というものは、どこに会社が向かうのかを明らかにする仕事だし、クリエイティブディレクターもそうだと思う。
「この企業はどっちに向かえばいいんだろう?」と。そこから考えるのがCDの仕事だと僕は昔から思ってましたね。それを逆算しながらクリエイティブを作って行くわけで、その方向によってチーム編成やキャスティングも決まって来るでしょう? その意味ではCDの仕事の中には人事も入ってくる。そこも経営によく似てるし、スタッフのモチベーションを高めるのも大きな仕事ですから。さっきメシを食わせるという話が出たけど、飯は給料じゃん?(笑)。

箭内: CDの時代から、安藤さんが「こっちだ!」と示す方向ってかなり的確だったじゃないですか。方向に対するあの感度というかセンスってなんなんでしょうね? 野生の勘なのか、新聞ちゃんと読めば身につくものなのかはわからないけど。

安藤: それはなかなか難しいとこだけど、新聞を読まないかって言ったら意外と読む。くまなく読みますね。自宅のある湘南から品川あるいは新橋まで、1時間弱あるでしょ? 昔は体力があったから二紙は読めた。そこには企業情報もあるし、生活者の情報もあるし、テクノロジーの話だって出てる。そういう情報基盤が一度頭の中に入ってしまうと、ものすごく効率が上がってくるんですよ。

箭内: そこはやっぱり特殊な才能があったんでしょうね? だれにでも同じことができるわけじゃないから。

安藤: オレね、ぐうたらだから。真の努力ができないんです。近道の努力ならできる。

箭内: 安藤さんて、ものすごい確信を持って“近道”を発表しますよね?(笑) 

安藤: でも、自分なりに答えは考えに考えてはいるわけ。

箭内: いや、考えてないって言ってるわけじゃないですよ(笑)。

安藤: パッと考えてるように見えるから(笑)。考えに考えて確信が持ててから言ってるんです。でも、それまではモゾモゾしてる。最後はやっぱりペン先で考えますね。コピーを書くわけじゃないけど、作戦名を考えるわけ。それがハマればいけると思って、次にみんなに投げて、いいかどうかを考えてもらう。いけそうなら昔は新聞という形で仮に定着させてみたりね。

箭内: 15段に言葉とビジュアルを入れてみるんですね?

安藤: ビジュアルというか商品カットとロゴをぼんと入れるくらいで。要素はできるだけ少ないほうがいいから3つに絞ってましたけど。

箭内: 確かに振り返ってみると、安藤さんてパッと考えたような演技をしている部分はあったのかもしれない(笑)。それもある種、CDの芸ですよね。
過去のことはなるべくふれないようにしたいと思いつつ、そもそもコピーライターだったんですよね? でも、コピーライターとしてそれほどスゴい仕事をした人という印象はないですけど。

安藤: ありませんね。

箭内: コピーライター時代の代表作を、あえてひとつ挙げていただくとすれば?

安藤: 副田高行さんが言うには、「安藤さんの代表作は『新型』ですね」って。それはどういう意味かと言うと、「新型ブルーバード」の新型。

箭内: 「新型」って日本語は安藤さんが初めて使い出したんですか。

安藤: そんなことないと思うけど。ようするにコピーライターとして働いてなかったということを言いたいんじゃないでしょうか?(笑)。

箭内: 「名選手は名監督ならず」じゃないですけど、アートディレクターやコピーライター時代は不完全燃焼だったのが、CDになった途端いきなり開花する人っているじゃないですか。安藤さんもCDになってからは面白かったでしょう?

安藤: まあ、面白かったかな? だいたい僕はコピーを「作品」なんて言うことが好きじゃないからね。完全に仕事主義なんです。で、CDになると、そういう発想の中でやってきたことが、たまたまも含めてうまくいったりして、「自分の思ってることがけっこう合ってるなあ」と実感できたし、それが博報堂の流れとも同調してたのね。

箭内: 時代の流れもね。

安藤: そう、世の中全部が同調してるような感じがあって、楽しかったし心地よかったし、会社に反旗をひるがえすようなこともなく、ある程度乱暴もできたんですけど。

箭内: 僕が博報堂に入ったのは1990年なんですけど、安藤さんのその頃の仕事で言うと、つかこうへいさん演出の「ラ党の人々」(キリンラガー)とかJRAとか、さっき仕事としてやっていたとはおっしゃいましたけど、表現の中に愛情みたいなものを感じるんですよ。あれ、僕、安藤さんらしさだと思うんですけどね。

安藤: そんなこと言われたの初めてだよ。 

箭内: いや、なんか“人間”がいました。

安藤: それはいたでしょう。得意先のものをなんとか売りたい、企業を元気にしたいってずっと強く思ってたし、そのためには生活者がニコニコするものを作らないと。そういう意味では、いまの話は納得できなわけではない。