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第十六回 箭内道彦 ✕ 操上和美



箭内: きちんとお会いしてお話うかがうのは今日が初めてで光栄なんですけど、いろんな人から操上さんの噂は聞いているんです。トレーニングされてるって話も聞くし、80歳で腹筋がまだ割れているとか。なぜ、そんなにカッコよくい続けられるんでしょうか?

操上: カッコよくはないですけど。

箭内: 「モテたいから」っておっしゃったという話も聞いたことあるんですけど…。

操上: 言ったことないよ(笑)。そんなことないです。仕事を続けたいから。極端に言うとね、仕事をするっていうことは、現場の環境に適応しなきゃいけませんよね? まず僕はカメラマンですし、CMのディレクターもやってるわけで、現場に自分を順応させるために、肉体的な機敏性だけでなく触覚的な生理感までを、いつも同じ状態にしておく必要があるんです。
老けちゃうとできないじゃないですか? この仕事って。それをキープするために、日々、自分なりに人知れず鍛錬しておかないと、どんどん落ちていきますから。僕の経験だと60歳くらいまでは上り坂でもっていけるかもしれないけど、それ以上の歳になるとあとは鍛錬しかない。それも筋肉を鍛えるというのではなく、「精神」と「機敏性」と「感覚」。その3つがそろってないと。

箭内: 精神的にも鍛える必要があるんですね?

操上: 精神というのはいわゆる欲望を含めてね。欲がないとダメですよ。ほしいとか触りたいとか。

箭内: モテたいとか?

操上: いや、モテるっていうのは結果としての話で。本人が「オレ、モテるためにやってる」なんて言ったらアホですよ(笑)。

箭内: そしたらあれはやっかみで言ってたんでしょうね、若いカメラマンたちが。

操上: まあ、モテたくなくはない(笑)。モテないと現場がうまく回りませんから。現場って年上から若い人まで色んな年齢の人がいるじゃないですか。被写体は若い人が多いですし、ファッションのモデルだと10代ですよね? そういう人たちにバカにされたらできないですよ。リレーションができて向こうがノッてこないと前に行けない。そういう意味でモテたいというのはあるかもしれません。
ようは写真家ですから、僕は写真を撮りたいわけですよ。写真を撮るということは毎日朝起きてから寝るまでチャンスがあるわけで、その瞬間に対して自分の感性を常に張っておかなきゃいけない。すると疲れるじゃないですか? そしたら疲れを癒すために酒も飲むし、おいしいものも食べますよね? それを続けてるとカラダがまいっちゃいますから、それに負けないようにするためには、ある程度からだも鍛えておかないと。

箭内: 体重なんかもずっと変わってないんじゃないですか?

操上: そうですね、えっと50年…いや60年くらい同じですかね。

箭内: えっ、20歳のときから?

操上: もちろん、多少の変化はありますよ。ローマに行くとイタリア料理がおいしくて1キロくらい太るとか。そういうのはありますけど基本はずっと55・5キロ。毎日量りに乗りますけど、「ちょっと増えたな?」と思うと本能的に食べる量を減らしてるかもしれません。特に意識することなくコントロールしてますよね。そういえば若いとき、一度だけ60キロになったことがありますけど、60はダメですね、重くて。
カメラマンって現場行くと一番先に歩くんですよ。砂漠でもどこでも。ロケハンもそうですし、本番のときも光を見て場所を決めないといけない。そういうことからすると、やっぱりカラダは元気なほうがいいですよね。

箭内: ちなみに精神の鍛錬というのはどうやってされてるんでしょうか。

操上: 欲望を持つことです。精神的渇望がいつもあるほうがいい。ほしがるんです、野良犬みたいに。見たい、触りたい、本を読みたい。日曜日とかたまたまスケジュールが空いたときでも、僕は家でじっとしてたことないですね、お客さんがあるとき以外は。必ずどこかに行きます。まだ見ていない映画があるとか、本屋に行こうとか、写真撮りに出かけるとか。